「仕方ねぇだろ。勘がいいのはスウェンの方だし、方角を感知するのはセイジが専門だ」
「おまッ――ただ闇雲に進んでいただけなのかよ!」

 お前馬鹿じゃないのか、なんで自信たっぷりにずんずん足を進めてんだよッ

 エルとクロエが、それぞれ言葉と鳴き声で抗議した。ログは次の階段を上がり、正方形の踊り場の折り返し地点でようやく足を止めると、顰め面で一人と一匹を振り返った。

「ここで一番広いスペースを確保出来んのは、城の中だけだろ。ようは中心にある、あの塔を目指せばいいって話だ」

 彼は仏頂面でそう断言し、背後へと親指を向けた。黄色い円錐系の一際大きな屋根が乗った城の中心が、巨大なコンクリート造りの迷路密集群と化した敷地内の、一番高い位置から屋根を覗かせていた。

 意味もない回廊や坂、アーチ型のトンネルとは違い、この巨大な迷路造りの中で、ただ唯一の建造物のようにも思える。

 エルは半ば納得しつつ、吹き抜けから自分たちが歩いてきた方向を確認した。いつの間にか、ずいぶんと高いところまで来ていた。下った迷路の向こうに、先程までいた遊園地の噴水地点が見える。