婦人はちょっと意外そうな顔をしたものの、お喋り好きで自慢話好きなところもあって、得意げに「勿論よ」と言ってきた。

「あなたはテレビなんて高価なものは持ってないでしょうけれど、うちには、リビングと寝室にきちんとあるわ。たくさんの宇宙船が来るらしいし、その彼らが連れている巨大な衛星船? みたいなものが、三日間は太陽を遮ってしまうんでしょ? 政府は隠そうとしているみたいだけれど」

 ああ、彼女は一部出ているその噂の方をお楽しみでいるらしい。すると彼女の息子が、菓子を噛みながらこう言った。

「宇宙船をじっくり観察してやるんだ!」
「うふふ、そうね、パパも三日間はお休みだから皆で見ましょ。予定では、今日の夜には到着するみたいだけれど、パパはただの惑星のなんとやらとか難しいことを言うのよねぇ」
「宇宙船に決まってるよ! そんで一番に乗せてもらうんだ!」

 まるで現実感のない予定が、明日に迫っている。婦人が旧式の薄型テレビをつけて、盛大に続けられているカウントダウン番組を見やった。画面には、きれいなスーツを着た清潔感溢れる男がいて、遠い世界のような声や調子で明るく喋り続けている。

 皆さまご覧下さい、※※※の首都上空を通過した未知の一機が、陸軍本部内へと消えていく様子です! これまで世界の各首都で目撃情報が相次ぎましたが、これから本格的に空に停滞する宇宙船が見られるかもしれませんよ!? 展望台などでは、既に多くの人々がカメラを手に撮影準備を整えており、このニュータワー通り660号線沿いにも、買い物や観光を楽しみながらたくさんの人々が――

「君は宇宙船を見たことがあるのかい」

 しばし画面を見つめていた僕は、ろくでなしの息子に尋ねてみた。彼と、彼の隣に並んだ太ったネズミが、間の抜けた顔を同じ方へと傾ける。