ツエマチ君は、どうやら早い段階で、シズノの所属する小隊に保護されたらしい。しかし彼は詳しい話をしたがらず、長い夜の始まりに話題が及ぶと口をつぐんだ。
彼は結局、誰も殺していないのだろう。彼をまるで小さな少年のように気遣うシズノを見て、僕は保護する者と、保護される者の関係を感じ取ってそう思った。僕もあえて、詳しいことを自分から口にしようとは思わなかった。ツエマチ君の「仲間」の一人すら、ここにはいなかった。
普段はがらんとしている通りは、陸軍の検問や支援物資を積んだトラックなどで、ごった返していた。
僕らは、ゆるゆると進むトラックで長い時間をかけて、騒ぎが収束したという自分達の区に戻った。そこでは死体の運び出しや、怪我人の手当てなどが建物の影や道端の至るところで行われていた。広い通りにはテントが設置され、疲れ切った顔をした高齢の医者と十数人の看護士達が、忙しく動いていた。
僕らはまず、各区に設けられた役場で、支援の申し込みと住民記録の再登録をしなければならなかった。暴動で隣の区まで流されたらしいツエマチ君は、役場までのことを優しくシズノから説明されている間も落ち着きがなかった。彼の目は、離れ離れになった仲間達を心配そうに探しているかのようだった。
「ちょっと用事があるので」
案の定、一通りの説明が終わると、ツエマチ君はそう先に告げて駆けて行ってしまった。本格的な暴動の中に残された彼のことを僕は知らないが、もしかしたら生死に関わるくらいのことが沢山起こったのだろう、ということだけは想像がついた。
彼は結局、誰も殺していないのだろう。彼をまるで小さな少年のように気遣うシズノを見て、僕は保護する者と、保護される者の関係を感じ取ってそう思った。僕もあえて、詳しいことを自分から口にしようとは思わなかった。ツエマチ君の「仲間」の一人すら、ここにはいなかった。
普段はがらんとしている通りは、陸軍の検問や支援物資を積んだトラックなどで、ごった返していた。
僕らは、ゆるゆると進むトラックで長い時間をかけて、騒ぎが収束したという自分達の区に戻った。そこでは死体の運び出しや、怪我人の手当てなどが建物の影や道端の至るところで行われていた。広い通りにはテントが設置され、疲れ切った顔をした高齢の医者と十数人の看護士達が、忙しく動いていた。
僕らはまず、各区に設けられた役場で、支援の申し込みと住民記録の再登録をしなければならなかった。暴動で隣の区まで流されたらしいツエマチ君は、役場までのことを優しくシズノから説明されている間も落ち着きがなかった。彼の目は、離れ離れになった仲間達を心配そうに探しているかのようだった。
「ちょっと用事があるので」
案の定、一通りの説明が終わると、ツエマチ君はそう先に告げて駆けて行ってしまった。本格的な暴動の中に残された彼のことを僕は知らないが、もしかしたら生死に関わるくらいのことが沢山起こったのだろう、ということだけは想像がついた。