窓から、突然なくなってしまったような空と、深夜のように死に絶えた静寂の町を眺めていると、もう世界はこれから終わってしまうのだという考えが頭を離れなかった。
たった一晩で、多くのものが世界から欠如してしまったのだろう。
こうして何かを食べていても、息を吸い込んでみても、瞬きを繰り返してみても、現実という感覚が、あらゆる五感的なところから遠いところにある気がした。そこには目に見えないまま僕らを無言で縛り付ける秩序や、そういった何もかもの欠落さえ思わせた。
世界が停止して、時間や、あたり前の現実すら壊れてしまったのだろう。
「――さぁ、行こう」
僕は、パトカーの巡回音が遠くから聞こえてくるのを耳にしながら、いつもの仕事用の作業着へと着替えた。その警告音が、続いて人の手でひしゃげていく様子を聞きながら、ふっとツエマチ君のことを思い出した。小さく震えていた彼は、今、どうしているのだろう。
僕は支度を整えると、ずっとしまい置いていた銃と、銃弾の替えを取って部屋を出た。
とっくに朝を迎えている時刻であるはずなのに、外には、静まり返った夜の町が広がっていた。
三日間の明けない夜が、世界をすっかり覆い尽くしている。僕は疲れ切った重い足を引きずり、なくなってしまっている早朝の気配を、なんとなく探しながら歩き続けた。
いつもの、七時三十分。
僕は、昨日や一昨日と同じようにして会社へと足を踏み入れた。付けられたばかりの冷房が、ねっとりと絡みつくような埃臭く生温い風の回転を始めていた。
奥の戸棚の上では、小さな珈琲メーカーが湯気を立てていた。上司はいつものデスク席にいて、朝の光もないブラインドが下りた窓の方を、しげしげと眺めたまま軽く手を振る。
「おはよう」
入ってきた僕に気付いたのか、目を向けずにそう言ってきた。
たった一晩で、多くのものが世界から欠如してしまったのだろう。
こうして何かを食べていても、息を吸い込んでみても、瞬きを繰り返してみても、現実という感覚が、あらゆる五感的なところから遠いところにある気がした。そこには目に見えないまま僕らを無言で縛り付ける秩序や、そういった何もかもの欠落さえ思わせた。
世界が停止して、時間や、あたり前の現実すら壊れてしまったのだろう。
「――さぁ、行こう」
僕は、パトカーの巡回音が遠くから聞こえてくるのを耳にしながら、いつもの仕事用の作業着へと着替えた。その警告音が、続いて人の手でひしゃげていく様子を聞きながら、ふっとツエマチ君のことを思い出した。小さく震えていた彼は、今、どうしているのだろう。
僕は支度を整えると、ずっとしまい置いていた銃と、銃弾の替えを取って部屋を出た。
とっくに朝を迎えている時刻であるはずなのに、外には、静まり返った夜の町が広がっていた。
三日間の明けない夜が、世界をすっかり覆い尽くしている。僕は疲れ切った重い足を引きずり、なくなってしまっている早朝の気配を、なんとなく探しながら歩き続けた。
いつもの、七時三十分。
僕は、昨日や一昨日と同じようにして会社へと足を踏み入れた。付けられたばかりの冷房が、ねっとりと絡みつくような埃臭く生温い風の回転を始めていた。
奥の戸棚の上では、小さな珈琲メーカーが湯気を立てていた。上司はいつものデスク席にいて、朝の光もないブラインドが下りた窓の方を、しげしげと眺めたまま軽く手を振る。
「おはよう」
入ってきた僕に気付いたのか、目を向けずにそう言ってきた。