その時、回想に耽っていた僕を呼ぶ声がした。
「先輩」
目を向けてみると、ツエマチ君が、心配そうな顔で僕を覗き込んでいる。
「どうかしたんですか? あの、もしかして俺、内容もクーデターだし、やっぱり先輩を辛くさせることを言ってしまったり――」
「いいや、なんでもなんいだよ」
僕は、記憶を胸にしまって彼を見つめ返した。ツエマチ君は、「そう、ですか」と言葉を濁すと、近付きすぎたことに気付いたかのように、そろりと距離を置いた。
「ずっと報復を望んでいたのに、まだ良心が完全には消えてくれないんです」
そう切り出した彼が、細い肩をぶるっと震わせて「きっと怖いんでしょうね」と己の震える手を見下ろした。
「いつかはヤってやるって、報復のことばかり考えていた。でも仲間と一緒に武器を集めて、実際にその日を迎えるのをブツを前に想像したら、こ、怖くて……徹底して人間をやめない限り、俺達は結局、人間であることから逃げ出せないんだなぁ、て……」
「そうかもしれない。だから僕達は、もしかしたら気付きたくないから目をそらして、そんなことを考えまいとして自分にも無関心でいようとするのかもしれない」
僕はそう答えた。
「でもね、ツエマチ君。きっと君は正しいんだ。仲間の多くが許して正当化した行為であったとしても、自らの手で暴力を出そうとすることを怖がる君は、きっと正しい」
「でも先輩、俺はずっとひどいこと考え続けていたんです。にこにこ笑っている間も、いつかはこうやって殺してやるだとか、それで明日には銃を持って突撃するのに……?」
でも僕は、それを怖いだとかは、もう感じない。
くしゃりと泣きそうな顔をした彼を、じっと眺めながら僕は思った。君は僕を優しい人だというけれど、君こそ優しいきちんとした人間だよ、と思って彼を見つめていた。
「先輩」
目を向けてみると、ツエマチ君が、心配そうな顔で僕を覗き込んでいる。
「どうかしたんですか? あの、もしかして俺、内容もクーデターだし、やっぱり先輩を辛くさせることを言ってしまったり――」
「いいや、なんでもなんいだよ」
僕は、記憶を胸にしまって彼を見つめ返した。ツエマチ君は、「そう、ですか」と言葉を濁すと、近付きすぎたことに気付いたかのように、そろりと距離を置いた。
「ずっと報復を望んでいたのに、まだ良心が完全には消えてくれないんです」
そう切り出した彼が、細い肩をぶるっと震わせて「きっと怖いんでしょうね」と己の震える手を見下ろした。
「いつかはヤってやるって、報復のことばかり考えていた。でも仲間と一緒に武器を集めて、実際にその日を迎えるのをブツを前に想像したら、こ、怖くて……徹底して人間をやめない限り、俺達は結局、人間であることから逃げ出せないんだなぁ、て……」
「そうかもしれない。だから僕達は、もしかしたら気付きたくないから目をそらして、そんなことを考えまいとして自分にも無関心でいようとするのかもしれない」
僕はそう答えた。
「でもね、ツエマチ君。きっと君は正しいんだ。仲間の多くが許して正当化した行為であったとしても、自らの手で暴力を出そうとすることを怖がる君は、きっと正しい」
「でも先輩、俺はずっとひどいこと考え続けていたんです。にこにこ笑っている間も、いつかはこうやって殺してやるだとか、それで明日には銃を持って突撃するのに……?」
でも僕は、それを怖いだとかは、もう感じない。
くしゃりと泣きそうな顔をした彼を、じっと眺めながら僕は思った。君は僕を優しい人だというけれど、君こそ優しいきちんとした人間だよ、と思って彼を見つめていた。