まず政府から正式な発表があり、そうして次々に特別番組が組まれていった。あらゆる専門家が、あらゆる立場の有名人が、その情報を自分が大発見したような熱意で伝えていった。賛否両論、様々な方向から色々な意見が上がり、世界が終わってしまうのではないかと騒ぐ人達、どっちでもいいよと面白がる無関心な者達もいた。

 そうやっている間にも、どんどん月日は流れていき、そうしてとうとう「三日間の夜」の始まりの日を迎えた。

 西日に傾いた太陽を、ゆっくりと覆い隠していった巨大なシルエットは、やがて闇に溶けてすっかり分からなくなった。ただ太陽がなくなって、いつもの夜があるばかりのようにも思えたが、夜明けの時間になっても空は明るくならなかった。

 いつも通りの、朝の時刻を刻んでいる時計。そちらの方が壊れてしまっているのではないかと疑いたくなるほど、世界を自然な夜がすっぽりと覆っていた。

 けれど朝の光りが来なくとも、僕は普段通りに起床していた。

 その日、いつもと変わらない時間の使い方でもって、淡々と動いて身支度を済ませた。仕事の作業着に着替え、昨日や一昨日と同じように擦り切れたスニーカーを履いた。最近は滅多に雨が降らないので、窓枠から芽を出した雑草に水をやることも忘れなかった。

 そろそろ出掛ける時間だというのに、その窓の向こうは真っ暗だった。本来はもうとっくに青空が見えているはずの時刻なのだが、星一つない闇ばかりが空に広がっている光景が、いつも見慣れている「夜」との違いを僕に知らしめるかのようだった。

 その窓の遠く向こうで、不意に、朝の見回りにやってくる巡回車の悲鳴が鈍く鳴り響いた。それは死んだような旧市街地に、無機質でありきたりな警報音を気だるく発する。