そのまま絡められた二人の薄い唇が、開けられた曇りガラスの窓からの日差しに、ぬらりと光った。
細すぎる女の剥き出しの肩から、大きく反った腰がエロティックな曲線を浮かび上がらせていた。突き出された小さな尻を隠すばかりの短パンは、薄い生地越しに肌を感じさせて、そこを男が撫でるたび彼女が悦ぶのが僕にも分かった。
ふと、男と目が合った。彼のつり上がった一重の瞳が、嫌悪感に細められる。
「何見てんだよ。さっさと風呂場の掃除に行けよ」
僕は、すみません、と謝って掃除道具を手に浴室へと向かった。反らせた腰を突き出したまま、懸命にせがんで揺れ動く女の尻を、男が今度は直に手を入れるのがちらりと見えた。
吐き気が込み上げて、僕は半ば駆けるように浴室に逃げ込んだ。自分のズボンの前チャックを突き上げたそれを見た途端、全身に嫌悪感が走った。
汚らしい、汚らしい、なんて汚らしいんだろう、僕らは。
けれど、何も感じないことは確かに楽なのだ。――僕のそこは、その一呼吸で一瞬にして力を失っていった。
◆◆◆
「へえ、性欲がないの?」
昔、この仕事に入りたての頃、僕には指導にあたってくれた誰よりも親身な先輩が一人いた。
僕より一つ年上で、十六歳の頃からこの会社で働いていたカナミさんだ。愛想が良くて、仕事を片付けていくのも速くて、高い料金を払う顧客を一番多く持っていた社員だった。
彼は、幼い頃からの小遣い稼ぎの癖が身体に染みているのか、どちらの性別に対しても快楽を与えられる人間だった。彼はあの時、面白半分で僕のものをズボン越しに触ったが、しばらくすると「ごめんよ」と言って手を離していった。
「お前が、『人として何も感じないことが欠点かも』って言うからさ。そんなことないよって証明してやるつもりだったんだけど、出来なかったな……ごめん」
細すぎる女の剥き出しの肩から、大きく反った腰がエロティックな曲線を浮かび上がらせていた。突き出された小さな尻を隠すばかりの短パンは、薄い生地越しに肌を感じさせて、そこを男が撫でるたび彼女が悦ぶのが僕にも分かった。
ふと、男と目が合った。彼のつり上がった一重の瞳が、嫌悪感に細められる。
「何見てんだよ。さっさと風呂場の掃除に行けよ」
僕は、すみません、と謝って掃除道具を手に浴室へと向かった。反らせた腰を突き出したまま、懸命にせがんで揺れ動く女の尻を、男が今度は直に手を入れるのがちらりと見えた。
吐き気が込み上げて、僕は半ば駆けるように浴室に逃げ込んだ。自分のズボンの前チャックを突き上げたそれを見た途端、全身に嫌悪感が走った。
汚らしい、汚らしい、なんて汚らしいんだろう、僕らは。
けれど、何も感じないことは確かに楽なのだ。――僕のそこは、その一呼吸で一瞬にして力を失っていった。
◆◆◆
「へえ、性欲がないの?」
昔、この仕事に入りたての頃、僕には指導にあたってくれた誰よりも親身な先輩が一人いた。
僕より一つ年上で、十六歳の頃からこの会社で働いていたカナミさんだ。愛想が良くて、仕事を片付けていくのも速くて、高い料金を払う顧客を一番多く持っていた社員だった。
彼は、幼い頃からの小遣い稼ぎの癖が身体に染みているのか、どちらの性別に対しても快楽を与えられる人間だった。彼はあの時、面白半分で僕のものをズボン越しに触ったが、しばらくすると「ごめんよ」と言って手を離していった。
「お前が、『人として何も感じないことが欠点かも』って言うからさ。そんなことないよって証明してやるつもりだったんだけど、出来なかったな……ごめん」