彼らが作る武器は、女性でも扱えるほど軽く、反動が抑えられたものも多い。ヨーロッパに出回っているペン型銃も、杖型を改造した日本の技術がそのまま行き渡っている。
反動が抑えられている小型ミサイル砲もあり、身体の小さな子供や女にでも手軽に扱える代物だった。潜入捜査でドレスを着る女性にとって、太腿にも隠せるタイプの爆弾や超小型砲は現場で大いに活躍していた。
総本部は、一見すると車も少なく整然としていたが、エージェントたちは様々な場所から地下通路によってやって来る事が多かったため、建物内は騒がしさに溢れていた。
その地下一階の技術研究課では、時間が空いたエージェントたちが顔を出し、武器の性能を確かめながら技術向上に協力することが日常的に行われている。
そんな技術研究課は、もっとも人の出入りが多い場所であった。いつも気さくで陽気な空気が溢れているのだが、今日は本部の中でたった九席しかない一桁ナンバーの人間がいたため、室内は張り詰めるような緊張感に包まれていた。そのナンバーを耳にした者は、「よりによって」という顔で黙りこむ。
技術室に訪れていたのは、一桁ナンバーでも驚異的な身体能力を持ったナンバー4であった。かれこれ八年その地位についているにも関わらず、その人間はひどく若い容姿をしている。
左手で差し入れのクッキーをつまみながら、悠長に大型の銃を軽々と右手で構え持つ青年がナンバー4だ。
彼はほとんど正面を見ないまま、的の中心に銃弾を撃ち込み続けている。未完成なその銃の重さや反動を知っている白衣の技術班たちと同様、他のエージェントたちも気圧されたように息を呑んで、その光景を見つめていた。
発砲音を抑えられたといっても、ジェット機用ミサイル砲の圧縮に成功したばかりの大型銃である。まだ試作段階のため、反動する力と発砲する際の風圧で、空気が重々しく揺れた。
連射されるミサイル砲に畏怖する者たちの気も知らないで、青年は細い身体からは想像できないほど激しく乱射し続ける。防音を防ぐためのヘルメットも、五十メートル離れた的を捉える機材も付けていない。
青年は、虫も殺せない小奇麗な顔をしていた。色素が薄く蒼みかかった灰色にも見える髪から覗く大きな黒い瞳は、瞳孔の縁が不自然に碧い円を描いている。その顔にまるで殺気はないが、獰猛な肉食獣のように縮小した彼の瞳孔は、見ている者に冷酷な死を思わせた。
「碧眼の、殺戮者……」
白衣をつけた高齢の技術班が呟いた。
ナンバー4は、その身一つで殺人兵器にもなりうるエージェントであった。彼は十代という若さで一桁ナンバーを与えられ、物騒な事とはほど遠い外見と気性で、死と破壊をもたらすギャップから「ペテン師」「道化」という異名もつけられている。
青年は、国家特殊機動部隊総本部では、異例といえるほど平凡な性格の持ち主だ。エージェント見習いでも裕に出来る「別の人間になりすます」事が不得意で、ぎこちない愛想笑いも学生時代から変わらなかった。
物珍しい事があると興味を持って近づき、「それも知らないのか」と小馬鹿にされそうな事も平気で尋ねて真剣に感心した。時々年齢よりも遥かに若い表情を浮かべて笑い、自分が就いている地位も関係なく接する事が常だった。
反動が抑えられている小型ミサイル砲もあり、身体の小さな子供や女にでも手軽に扱える代物だった。潜入捜査でドレスを着る女性にとって、太腿にも隠せるタイプの爆弾や超小型砲は現場で大いに活躍していた。
総本部は、一見すると車も少なく整然としていたが、エージェントたちは様々な場所から地下通路によってやって来る事が多かったため、建物内は騒がしさに溢れていた。
その地下一階の技術研究課では、時間が空いたエージェントたちが顔を出し、武器の性能を確かめながら技術向上に協力することが日常的に行われている。
そんな技術研究課は、もっとも人の出入りが多い場所であった。いつも気さくで陽気な空気が溢れているのだが、今日は本部の中でたった九席しかない一桁ナンバーの人間がいたため、室内は張り詰めるような緊張感に包まれていた。そのナンバーを耳にした者は、「よりによって」という顔で黙りこむ。
技術室に訪れていたのは、一桁ナンバーでも驚異的な身体能力を持ったナンバー4であった。かれこれ八年その地位についているにも関わらず、その人間はひどく若い容姿をしている。
左手で差し入れのクッキーをつまみながら、悠長に大型の銃を軽々と右手で構え持つ青年がナンバー4だ。
彼はほとんど正面を見ないまま、的の中心に銃弾を撃ち込み続けている。未完成なその銃の重さや反動を知っている白衣の技術班たちと同様、他のエージェントたちも気圧されたように息を呑んで、その光景を見つめていた。
発砲音を抑えられたといっても、ジェット機用ミサイル砲の圧縮に成功したばかりの大型銃である。まだ試作段階のため、反動する力と発砲する際の風圧で、空気が重々しく揺れた。
連射されるミサイル砲に畏怖する者たちの気も知らないで、青年は細い身体からは想像できないほど激しく乱射し続ける。防音を防ぐためのヘルメットも、五十メートル離れた的を捉える機材も付けていない。
青年は、虫も殺せない小奇麗な顔をしていた。色素が薄く蒼みかかった灰色にも見える髪から覗く大きな黒い瞳は、瞳孔の縁が不自然に碧い円を描いている。その顔にまるで殺気はないが、獰猛な肉食獣のように縮小した彼の瞳孔は、見ている者に冷酷な死を思わせた。
「碧眼の、殺戮者……」
白衣をつけた高齢の技術班が呟いた。
ナンバー4は、その身一つで殺人兵器にもなりうるエージェントであった。彼は十代という若さで一桁ナンバーを与えられ、物騒な事とはほど遠い外見と気性で、死と破壊をもたらすギャップから「ペテン師」「道化」という異名もつけられている。
青年は、国家特殊機動部隊総本部では、異例といえるほど平凡な性格の持ち主だ。エージェント見習いでも裕に出来る「別の人間になりすます」事が不得意で、ぎこちない愛想笑いも学生時代から変わらなかった。
物珍しい事があると興味を持って近づき、「それも知らないのか」と小馬鹿にされそうな事も平気で尋ねて真剣に感心した。時々年齢よりも遥かに若い表情を浮かべて笑い、自分が就いている地位も関係なく接する事が常だった。


