結局、その日の夜は、雨が降ることはなかった。

 翌日には見事な晴れ空が広がっていて、通りは今まで以上に活気づいた。人の行き交いも一段と増え、客を呼び込む人間の声も元気を増して大きくなる。

 鞄を背負っていない子供たちの会話から、今日が休日であることを知った。ならばほとんどココから顔を出せないなと思いながら、私は大きな欠伸を一つした。

 じめっとしていた空気も、カラッとした日差しに拭われて、ほど良い暖かさが心地良い。

 休日は変わり者が多いのか、私の存在に気付いた人間が、時々やってきては弁当の残りやパンなどを少し置いていった。ちょうど腹が減っていたタイミングでもあったので、私は彼らがいなくなったのを確認してから有り難くそれを頂いた。

 味の評価をするならば、昨日、あの女が持ってきた「缶詰」とやらに比べると美味くはない。だがそんな贅沢も言っておれず、結局のところ私はすべてを平らげた。

 通りの休日ムードに対して、魚の店の女は忙しかったようだ。夕方になっても行き交う人間の数は一向に減る気配がなく、昼時をだいぶ過ぎた頃になってようやく「ごめんね、おチビちゃん」と言いながら、本日一回目となる例の解した魚の身を持ってきた。