「お願いだから、元気でいてちょうだい。私達、ずっとそばにいるから――ね?」

 ああ、知っているよ。

 愛してくれて、ありがとう。
 私は、あなた達の家族になれたことが、とても誇らしい。

 私はそれがせいいっぱい伝わるよう、喉を鳴らして目を細めると、その手に頭を擦り寄せた。すると男の方が、こう続けてきた。

「クロ、何も心配しないでいいんだよ。私達は、ずっとそばにいるんだから」

 男は穏やかに微笑んでいたが、その声は震えていた。

 私は、愛嬌を込めて「ニャーン」と鳴いてやった。元気に見えるといいと思った。愛想なんてないと思っていたのになぁと少し笑い、首を上げているだけでひどく疲れてしまったのを悟られないよう、どうにか自然に見えるようにして丸くなった。

 直後、女がこらえきれなくなった様子で泣き出した。男が気遣う声を掛けて、彼女の肩を抱き寄せる。

「ほら、泣くんじゃない。クロの前だぞ?」
「だって、あなた……クロちゃん、夜中に鳴くのよ。か細い声で、ずっと。まるで別れを惜しむみたいに一晩中、どんなに撫でても抱きしめても、か細い声で鳴くのよ……」

 そう言うと、女の小さな嗚咽が続いた。

 どうやら私は、感じ取っている別れを寝言に出してしまっているらしい。私は夜にたっぷり眠っているはずなのに、朝方ひどく疲れを感じている理由を悟った。

 十四年前の私からは考えられないほど、今の暮らしに別れを惜しんでいるのかもしれない。