高校に上がってからというもの、娘はいつも落ち着きがない。

 初めての部活に、沢山の勉強。覚える事や、こなさなければならない事が盛り沢山で、友だち付き合いや学校行事と、二年は慌ただしく過ぎていった。

 それに対して、男の方は仕事が落ち着いたようだった。書斎室にずっと閉じこもる事がなくなり、午前中以外を有意義に使って娘に付き合っていた。女も専業主婦となり、娘の送迎や主婦付き合いを始め、幸せそうな毎日を過ごしている。

 この二年で、娘は更に大きく成長した。

 一年前から伸ばし始めた髪は、いつも可愛らしくまとめられ、女性として意識し出したのか顔の手入れにも力が入った。最近では、薄く化粧もしている。

「あ、いっけない! ブレザー忘れてた!」
「おいおい、大丈夫かい?」

 突然食卓を立って走り出した娘を見て、男が呆れたように言った。その顔にはやや拾うが浮かんでおり、ちょっと寝不足気味で何度か欠伸もこぼしている。

 今日は、娘の高校三年度の始業式である。私も朝一番だというのに欠伸がとまらず、つい数時間前までずっと娘に付き合わされたせいで、くたくただった。

 春休みも充実した時間を送ってめいいっぱい遊んでもいた娘は、なんと今日の準備がほとんど出来ていなかったのだ。おかげで昨夜遅くまで、私と男と女を付き合わせてバタバタと準備に追われたのである。

 昨日の夜、女は娘が学校に持って行く物の買い出しに行き、男は娘と提出物をこなすのに追われた。私は鞄に仕舞い忘れがないかどうか確認しつつ、制服と部活着の下に埋もれるという事件にも巻き込まれた。