それが事実と知っても、私は悲観的な気持ちにはならない。このまま生涯を終えようと、たとえ最期の瞬間を迎えるのが違う場所であったとしても、私の中では大差変わりない。

 生きるために食べて、寝て、そしていつかはどこかで死ぬ。

 今の私は、あまりにも幼く小さい。こうやって女からご飯をもらわねばならないが、もう少し大きくなれば、自分で獲物を獲ることが出来るようになるだろう。だから今は、大きくなるために、ここでじっとしていなければならない時期なのだ。


 耐えて、耐えて、息を潜め、ひたすらに私は、生きるためだけに食うのだ。


 時々、ゴミ箱の間に隠れている私に気付く人間がいたりする。またしても目が合った私は、チラリと目に留めただけで、身を低くしたままそこから動かなかった。

 わざわざ足を止める者も、たまにいたりする。けれど彼らは、ただただ好奇心から私を見ているだけなのだ。あの女のようにご飯を与えてくれるわけでもなく、自分より惨めで弱い存在を視認した時の優越感に酔っているだけのように私には見えた。

 しばらくすると、曇天が少し晴れて夕焼け空が覗いた。

 茜色がかかり始めた町の景色の中、高く煩わしい声が聞こえ始めて、私は普段より警戒を強めた。息を殺したまま音を立てないよう後退し、ゴミ袋の間の奥に身を隠す。

 この時間になると、人間の子供たちが通るのである。