捨てられたのも野良暮らしなのも、私の方だ。それなのに、痛いと訴えるような表情を浮かべた男を、私は不思議に思ってじっと見つめ返した。

 まるで同情するみたいな目だった。そんなことをされる筋合はない。だって私は、期待もしていなければ、誰にも裏切られてはいないのだ。ただただ人間が、そして自分以外の全てが、信用出来ないだけである。

          ※※※

 それからの四日間は、女のくれる魚の身と男の缶詰が私のご飯だった。

 おかげで腹が十分に膨れて、私はひどい飢えを感じることはなかった。晴れの日が続いたこともあってか、毛並みもすこぶる良いように感じた。


 そして五日目がきて、私は数日振りに毛がぼわぼわするような湿気を覚えた。朝から重々しい曇りの天気で、ゴミ箱の間から見える通りの景色は、私が初めて見た時の灰色の景色に戻っていた。

 その日は、店を開けた女が、珍しく朝一番にご飯を持ってやって来た。朝くれるということは、昼間は忙しくて抜けられないのだろう。空を見上げた女が「今日は降りそうねぇ」と呟く声を聞きながら、私は夕方まで寝てやり過ごすことを考えつつそれを食べた。

 活気のない人々と車が、視界の中を淡々と流れていく。空気も生ぬるく湿っていて、私は居心地の悪さを感じながら、ゴミ箱の後ろに隠れるように奥で丸くなった。

 そして、そのまま一眠りするべく意識を手放した。