私という人間は、何か問題を起こすように作られているのだろうか。

 そう思ったことは一度や二度じゃないけれど、密かに楽しみにしていたライブの直前にまで事件を起こすなんて、我ながら呆れてしまう。



「直ちゃん、アヤ~! どこに行っちゃったの~?」



 体育館の隅で、私は半べそをかいていた。

 それはライブの開始時刻一〇分前のこと。直ちゃんの彼、ショウくんが担当するギターの立ち位置の前に、私たちは場所を確保したはずだった。

 いつもより髪を強めに巻いたアヤと、そのアヤから手の甲に『ショウ』と落書きされた直ちゃん、そして私の三人でその位置にいたはずだった。美羽は最前列の中央を陣取っていた。

 ライブ会場となった第一体育館の中に椅子はなく、立ち見で鑑賞する本格的な形式だった。これがいけなかった。

 開始五分前、「アツキ先輩のライブ始まるよ~!」と誰かが叫んだのをきっかけに、彼のファンであろう女の子たちが雪崩のように押し寄せてきたのだ。

 入口はステージに向かって右側にあり、そのせいで、会場の右側にいた私は中央へと押し流された。まるでバーゲンセールの争いのようだった。

 アツキ先輩がこれを見ていたなら、どんなに美人な女の子が相手でもドン引きしてしまうのではないかと思うほどに酷い光景だった。

 数秒の間に直ちゃんとアヤの頭は見えなくなり、身長一五〇センチの私は人の波に埋まってしまった。頭と足が違う位置にあったと思う。都会の通勤電車ってきっとこんな感じなんだろうなと思いながら、意識が遠のきそうになった。

 ライトが消えた時にはもう会場の左の方にいて、何が何だか分からなかった。始まる前から、違う意味で泣きそうだった。直ちゃんはおろか、最前列中央にいる美羽の姿すら確認できなくて、どうにか両足をついた会場の左側、前から三列目くらいの位置で、私は背伸びをした。



 どうしてこうなってしまうんだろう。

 直ちゃんが一緒にいないとドジばかりするくせに、一緒にいてもこのザマだ。涙がじわりと浮かびあがってくる。

 この人混みでは、もう外に出ることもできない。直ちゃんもアヤもしっかりしてるから、きっと二人ははぐれずにいるだろう。どうして私だけ、いつもこうなるのかなぁ。