「一緒に……生きていこうよ」
どうしようもなく辛くなる瞬間はきっとこれからもあって、あのとき死ななくて良かったって思う反面、死んどけば良かったって思うこともあるかもしれない。そんなことの繰り返しになるかもしれない。でも、
「まだ、この世界は綺麗で溢れてるよ」
まだ、見たことのない世界がいくらでも広がってる。
知らないだけで、どれだけでも広がってるんだ。
空を見て、綺麗だと思える心があるなら、まだ瀬名くんの心は、闇の底じゃないから。まだ、手を伸ばして届く場所にいるはずだから。そう、思いたい。
「青春っぽいこと、これからもたくさんしようよ。最後なんかじゃないんだよ。これからも、瀬名くんの世界は広がり続けていくよ!」
迷いは本当になかったのだろうか。本当に今日が最後なのだろうか。
——いやだ、そんなのは嫌だ。
嫌なんだ、いなくなってしまうのは。目の前から瀬名くんがいなくなってしまうなんて、そんなのは耐えられない。
私の日常に、瀬名くんという存在が出来て、心にいてくれて、今までも、そしてこれからも、その日常は変わることなく続いてほしい。
どうか、この世界に、瀬名くんが居続けてほしい。
「まだたくさん、たくさん、瀬名くんといたいから……!」
声が上ずってしまう。それでも、思いが込み上げて声量が大きくなる。
カシャっとフェンスが揺れる音がする。その背中が、すっと落ちていく姿が見えて、咄嗟に出た右足が止まる。
「……っ」
こんなとき、声も出ないんだって、そう思った。
「……はは、今まで一番でかい声」
落ちる、と思った体は崩れるようにして地べたで小さくなっていた。
「……無責任だなぁ」
乾いた笑みが、彼の横顔に張り付いている。
「無責任だよ、ほんと」
そう消え入りそうな声で、白い背中が震えていた。
あの瀬名くんが、初めて見せてくれた、心の彼のような気がして、体の力が抜けていく。コンクリートに座り込むと、生足にひんやりと冷たさが伝わる。
「……ほんと、無責任」
〝無責任〟そう続ける彼は、きっと今、自分自身と戦っている。
いつも飄々として、なにを考えているのかわからなくて、マザコンで、変わっていて、でもそれは、彼がこの世界で生きる為に身に着けた術だったんじゃないかと思う。
その鎧を着ることで、彼はこの世界で息が出来ていた。
笑顔の下で、生きる道に悩んで、追い詰められて、声にならない叫びで誰かに助けを求めていた。
「どこでも、ついてこいよ」
「……いくよ、どこだって」
どこだって、ついていく。
どうしようもなく辛くなる瞬間はきっとこれからもあって、あのとき死ななくて良かったって思う反面、死んどけば良かったって思うこともあるかもしれない。そんなことの繰り返しになるかもしれない。でも、
「まだ、この世界は綺麗で溢れてるよ」
まだ、見たことのない世界がいくらでも広がってる。
知らないだけで、どれだけでも広がってるんだ。
空を見て、綺麗だと思える心があるなら、まだ瀬名くんの心は、闇の底じゃないから。まだ、手を伸ばして届く場所にいるはずだから。そう、思いたい。
「青春っぽいこと、これからもたくさんしようよ。最後なんかじゃないんだよ。これからも、瀬名くんの世界は広がり続けていくよ!」
迷いは本当になかったのだろうか。本当に今日が最後なのだろうか。
——いやだ、そんなのは嫌だ。
嫌なんだ、いなくなってしまうのは。目の前から瀬名くんがいなくなってしまうなんて、そんなのは耐えられない。
私の日常に、瀬名くんという存在が出来て、心にいてくれて、今までも、そしてこれからも、その日常は変わることなく続いてほしい。
どうか、この世界に、瀬名くんが居続けてほしい。
「まだたくさん、たくさん、瀬名くんといたいから……!」
声が上ずってしまう。それでも、思いが込み上げて声量が大きくなる。
カシャっとフェンスが揺れる音がする。その背中が、すっと落ちていく姿が見えて、咄嗟に出た右足が止まる。
「……っ」
こんなとき、声も出ないんだって、そう思った。
「……はは、今まで一番でかい声」
落ちる、と思った体は崩れるようにして地べたで小さくなっていた。
「……無責任だなぁ」
乾いた笑みが、彼の横顔に張り付いている。
「無責任だよ、ほんと」
そう消え入りそうな声で、白い背中が震えていた。
あの瀬名くんが、初めて見せてくれた、心の彼のような気がして、体の力が抜けていく。コンクリートに座り込むと、生足にひんやりと冷たさが伝わる。
「……ほんと、無責任」
〝無責任〟そう続ける彼は、きっと今、自分自身と戦っている。
いつも飄々として、なにを考えているのかわからなくて、マザコンで、変わっていて、でもそれは、彼がこの世界で生きる為に身に着けた術だったんじゃないかと思う。
その鎧を着ることで、彼はこの世界で息が出来ていた。
笑顔の下で、生きる道に悩んで、追い詰められて、声にならない叫びで誰かに助けを求めていた。
「どこでも、ついてこいよ」
「……いくよ、どこだって」
どこだって、ついていく。