「……あの、ね!」
声が、掠れる。消えていきそう。
ゆらり、と動いた背中がぴたりと止まる。
「私……瀬名くんのこと嫌いだったよ」
正しいのかなんてわからない。
でも、引き止める言葉なんて、生きてなんて、私には言えなかった。
「冷たくて、平気で人を傷つけるようなこと言って、なにも教えてくれなくて」
心が、いっぱいになる。伝わるだろうか。伝わってくれるだろうか。
「でも、そんな瀬名くんは、高校生になって……人生を諦めて、もう無理だって追い込まれてた人だった。辛いところにいるなんて、私は全然知らなかった。私も死にたかった。ほんとうにずっと死にたかった! どうしようもなく自分が嫌いで、こんな自分消えてしまったらいいって何度も思った! 私なんかが死んだって、世界は動いていくんだもん。だから、死んでもいいってそう思ってたの」
黒いカーテンが、ひらひらと揺れる。その光景を、まさか教室で見るとは思ってもいなかった。
「でも、死ななくてよかったって思ってる! これから先、死にたいって思うことはあるだろうけど、でも、死ななくてよかったって思える人生にしたいの!」
お願い、届いて。届いて、瀬名くん。
「これから先を生きていくって、瀬名くんにとって辛い選択肢なのかもしれない。でも、その何年後かには、生きてるから見えた景色がたくさんあるんだよ。あのとき、自分を捨てなくて良かったって思うようになるんだよ! 大人になって、おじいちゃんになって、そのとき、きっと思うの。〝あのとき、屋上から飛び降りなくてよかった〟って」
未来の自分が見たら、きっと、きっとそう思う。そう思ってほしい。
「……生きて! 瀬名くん、生きて!」
こんなことを言って、ごめんね。こんな無責任なことを言って、ごめんね。
でも、死んでほしくない。瀬名くんには生きててほしい。たとえそれが私のわがままだとしても、瀬名くんを死なせたくない。生きててほしい。
声が、掠れる。消えていきそう。
ゆらり、と動いた背中がぴたりと止まる。
「私……瀬名くんのこと嫌いだったよ」
正しいのかなんてわからない。
でも、引き止める言葉なんて、生きてなんて、私には言えなかった。
「冷たくて、平気で人を傷つけるようなこと言って、なにも教えてくれなくて」
心が、いっぱいになる。伝わるだろうか。伝わってくれるだろうか。
「でも、そんな瀬名くんは、高校生になって……人生を諦めて、もう無理だって追い込まれてた人だった。辛いところにいるなんて、私は全然知らなかった。私も死にたかった。ほんとうにずっと死にたかった! どうしようもなく自分が嫌いで、こんな自分消えてしまったらいいって何度も思った! 私なんかが死んだって、世界は動いていくんだもん。だから、死んでもいいってそう思ってたの」
黒いカーテンが、ひらひらと揺れる。その光景を、まさか教室で見るとは思ってもいなかった。
「でも、死ななくてよかったって思ってる! これから先、死にたいって思うことはあるだろうけど、でも、死ななくてよかったって思える人生にしたいの!」
お願い、届いて。届いて、瀬名くん。
「これから先を生きていくって、瀬名くんにとって辛い選択肢なのかもしれない。でも、その何年後かには、生きてるから見えた景色がたくさんあるんだよ。あのとき、自分を捨てなくて良かったって思うようになるんだよ! 大人になって、おじいちゃんになって、そのとき、きっと思うの。〝あのとき、屋上から飛び降りなくてよかった〟って」
未来の自分が見たら、きっと、きっとそう思う。そう思ってほしい。
「……生きて! 瀬名くん、生きて!」
こんなことを言って、ごめんね。こんな無責任なことを言って、ごめんね。
でも、死んでほしくない。瀬名くんには生きててほしい。たとえそれが私のわがままだとしても、瀬名くんを死なせたくない。生きててほしい。