「瀬名くんこそ、お疲れ様」
「俺はなにも」
「そんなことないよ」
 本当に、そんなことはない。私一人では決して務まらなかった。その想いが通じたのか通じていないのか、彼は「うん」と力なく頷いた。
「じゃあ、改めて」
「うん、じゃあね」
 そう、笑い合って互いに背を向けた。
 校舎を出て、真っ直ぐ言った琴音と桐原くん。その右は瀬名くんで、左は私。綺麗に皆が分かれるように帰っていく。
 空を見上げ、無数に輝く星をぼんやりと見つめる。
 今頃みんなもこの星を見て帰ってるんだろうか。同じ空の下で、それぞれが皆、いろんな思いを抱えて、見つめているんだと思うとなんだか心強くなって、安心する——そう、無理に思っていないと、なんだか心がおかしくなりそうだった。