グラウンドに残された消火済みのキャンプファイヤーを見て、寂しくなった。
たくさん準備をかけても、この高校の文化祭はたった一日。二日、三日と続くわけじゃない。だからこそ、こうして名残惜しさを感じてしまうのかもしれない。
「三春」
校門近くで琴音が呼んでいる。「早くおいで」なんて言われながら、下駄箱に上履きをしまい、地べたに置いたローファーに足を突っ込む。
と同時に何かが床に落ちる音が聞こえ、視線を流せば黒いスマホケースが転がっていた。
それを拾い上げ画面が割れていないか確認すれば、
「──っ」
ブルーライトが目を刺激する。真っ暗だった画面は少し触れただけでどうやら反応してしまったらしい。暗闇の中でぼぅと光る画面に、私を言葉にならない衝撃を受けた。
どくどく、と心臓が鳴る。それは鳴り止むことを知らないようで、どういうことなのかを瞬時に考えて、でも、なにも思い浮かばなくて、ゆっくりと持ち主にスマホケースを差し出す。
「……瀬名くん、落ちたよ」
「え? ああ、ありがと」
落としたことに気付いていなかった彼は、靴を取り出しながらもう片方の手でスマホを受け取った。
真っ暗に戻った画面は、何事もなく彼のブレザーのポケットにしまわれる。それを眺めていれば「なに?」と不思議そうな顔で首を傾げた彼と目が合う。
「ううん、なんでも」
「そ、早く行かねーと香川さんに怒られるよ」
「……うん」
文化祭が終わり、時間はもう二十時をまわろうとしていた。
ほとんどの生徒が帰った校舎を振り返れば、賑やかさなどなかったかのようにしんみりと佇んでいた。
「じゃあ、また明日……じゃないか、また月曜日!」
「うん、また月曜日」
そう頷いた私に琴音は満足そうに笑った。
「じゃーな」
桐原くんと琴音は、ぽつぽつと並んだ街灯のある道を二人仲良く帰っていった。家が近いのはどこか羨ましかったりする。
「じゃあ」
瀬名くんが軽く手をあげたので、私もつられて右手をあげる。
「うん」
「あ」
何か思い出したような顔つきは、少し口角をあげ、
「委員、お疲れ様」
どこかほっとするような笑みを浮かべた。
たくさん準備をかけても、この高校の文化祭はたった一日。二日、三日と続くわけじゃない。だからこそ、こうして名残惜しさを感じてしまうのかもしれない。
「三春」
校門近くで琴音が呼んでいる。「早くおいで」なんて言われながら、下駄箱に上履きをしまい、地べたに置いたローファーに足を突っ込む。
と同時に何かが床に落ちる音が聞こえ、視線を流せば黒いスマホケースが転がっていた。
それを拾い上げ画面が割れていないか確認すれば、
「──っ」
ブルーライトが目を刺激する。真っ暗だった画面は少し触れただけでどうやら反応してしまったらしい。暗闇の中でぼぅと光る画面に、私を言葉にならない衝撃を受けた。
どくどく、と心臓が鳴る。それは鳴り止むことを知らないようで、どういうことなのかを瞬時に考えて、でも、なにも思い浮かばなくて、ゆっくりと持ち主にスマホケースを差し出す。
「……瀬名くん、落ちたよ」
「え? ああ、ありがと」
落としたことに気付いていなかった彼は、靴を取り出しながらもう片方の手でスマホを受け取った。
真っ暗に戻った画面は、何事もなく彼のブレザーのポケットにしまわれる。それを眺めていれば「なに?」と不思議そうな顔で首を傾げた彼と目が合う。
「ううん、なんでも」
「そ、早く行かねーと香川さんに怒られるよ」
「……うん」
文化祭が終わり、時間はもう二十時をまわろうとしていた。
ほとんどの生徒が帰った校舎を振り返れば、賑やかさなどなかったかのようにしんみりと佇んでいた。
「じゃあ、また明日……じゃないか、また月曜日!」
「うん、また月曜日」
そう頷いた私に琴音は満足そうに笑った。
「じゃーな」
桐原くんと琴音は、ぽつぽつと並んだ街灯のある道を二人仲良く帰っていった。家が近いのはどこか羨ましかったりする。
「じゃあ」
瀬名くんが軽く手をあげたので、私もつられて右手をあげる。
「うん」
「あ」
何か思い出したような顔つきは、少し口角をあげ、
「委員、お疲れ様」
どこかほっとするような笑みを浮かべた。