グラウンドに設けられたそのステージの前には生徒がどっと押し寄せ賑わいを見せている。後夜祭が始まり、今はちょうど軽音部によるライブが行われていた。
「あーもう、またいなくなってるんだから!」
琴音の声が廊下に響き視線が逸れる。
「あ、ごめんごめん」
「もう、瀬名に聞いたら、いきなり消えたとか言い出すし。あいつ、ぜんぜん役立たないんだから」
頬を膨らませた彼女を宥めるように「ごめん」とまた繰り返す。
それからまた窓の外へと視線を戻す。そこには、さっきまで見えていた莉子の背中があって、その姿は静かに消えていった。
『許せないこともいっぱいある……でも、私も莉子を傷つけたことあるだろうか。ごめんね』
そう言った莉子は、ううん、と首を振った。
莉子とは、それから、じゃあね、と別れて終わった。
「不思議だね」
軽音部が奏でる音とともに、琴音の声が風にのって耳に届く。
「ん?」
「ほら、こうして私たちが一緒にいるの」
少し照れくさそうに笑う琴音を見て「そうだね」と静かに呟いた。
文化祭が始まる頃は、琴音に話しかけられるを避けたいと思っていて、琴音の笑みが苦手で、きっと友達にはなれないタイプだと思っていた。
そんな人が今、私の隣にいる。
「三春、なんかこの文化祭で変わったよね」
「そう?」
「前より声出るようになったし、何より表情が豊かになった」
「どうだろう、自分じゃわからないなあ」
「瀬名のおかげ?」
「えっ、いや、そんな!」
「全力過ぎて逆に怪しい」
そう冗談っぽく茶化されるものだから「やめてよ」と視線を外す。
「何が俺のおかげだって?」
ひょこっと現れた瀬名くんの顔に肩が飛び上がるように反応する。そんな私を見て彼は「はは、大袈裟」と笑う。
「あーほら、三春の表情が豊かになったのって瀬名の——」
「あーもう、またいなくなってるんだから!」
琴音の声が廊下に響き視線が逸れる。
「あ、ごめんごめん」
「もう、瀬名に聞いたら、いきなり消えたとか言い出すし。あいつ、ぜんぜん役立たないんだから」
頬を膨らませた彼女を宥めるように「ごめん」とまた繰り返す。
それからまた窓の外へと視線を戻す。そこには、さっきまで見えていた莉子の背中があって、その姿は静かに消えていった。
『許せないこともいっぱいある……でも、私も莉子を傷つけたことあるだろうか。ごめんね』
そう言った莉子は、ううん、と首を振った。
莉子とは、それから、じゃあね、と別れて終わった。
「不思議だね」
軽音部が奏でる音とともに、琴音の声が風にのって耳に届く。
「ん?」
「ほら、こうして私たちが一緒にいるの」
少し照れくさそうに笑う琴音を見て「そうだね」と静かに呟いた。
文化祭が始まる頃は、琴音に話しかけられるを避けたいと思っていて、琴音の笑みが苦手で、きっと友達にはなれないタイプだと思っていた。
そんな人が今、私の隣にいる。
「三春、なんかこの文化祭で変わったよね」
「そう?」
「前より声出るようになったし、何より表情が豊かになった」
「どうだろう、自分じゃわからないなあ」
「瀬名のおかげ?」
「えっ、いや、そんな!」
「全力過ぎて逆に怪しい」
そう冗談っぽく茶化されるものだから「やめてよ」と視線を外す。
「何が俺のおかげだって?」
ひょこっと現れた瀬名くんの顔に肩が飛び上がるように反応する。そんな私を見て彼は「はは、大袈裟」と笑う。
「あーほら、三春の表情が豊かになったのって瀬名の——」