校内に流れた片付けのアナウンスは十六時ちょうどに校舎、グラウンドなどに鳴り響いていた。
西に傾いた陽の光。橙色に染まっていく空を眺めながら、ぽつりと思った。
(ああ、本当に終わったんだ……)
 この二か月。思えばがむしゃらに動いていた。文化祭実行委員に抜擢された時なんか果たして自分に務まるのだろうかとさえ思っていたのに。
 廊下で剥がされていく看板などを見て、その役から解放されようとしている実感をする。
「ほら、綿世! はやく!」
 瀬名くんがプラネタリウムの中から私を手招きしている。
 クラスメイトが後夜祭のためにグラウンドへと出ていく中、私と瀬名くんはこっそりと教室に残っていた。
「へえ、なんか意外としっかりしてるな」
 光が遮断された空間で映し出されていたのは、淡い青の空。
 それからゆっくりと色が深くなり、次第に黒へと流れつくと、小さな星々が光りはじめる。
 その様子を、私と瀬名くんはごろりと寝そべって見上げる。
「贅沢だ」
「ほんとにな。これ、作った俺らすげえ」
 自画自賛。でも、その通りだ。これを作った私たち、ほんとうにすごい。
 たくさんたくさん嫌なことがあって、たくさんたくさん乗り越えてきたものがあった。その集大成がこの空なんだと思うと、頑張ってよかったと心から思える。
「この空を、きれいだって思って見てもらえたかな」
「見てもらえたよ。きれいだと思えない奴は、心が腐ってんだよ」
「それは言い過ぎだよ」
 本物の空じゃないかもしれない。
 でも、この空だから、今こんなにも感動している。
 きっと私一人では何も出来なかった。
 もう一人のパートナーとして瀬名くんがいてくれたから、きっと私は委員としてやってこれた。
「ありがとう、瀬名くん」
「なんだよ、いきなり」
「いや、瀬名くんがいてくれてよかったなと思って」
 照れくさいことも、今なら言える。