「なにやってんだよ」
そう言いながらポケットティッシュをさり気なく出すあたり桐原くんの几帳面さがうかがえる。意外。
「桐原くん、私これから委員の仕事があって、琴音が一人になっちゃうのでどうぞ一緒に」
「え、ちょっと三春!」
「え、なにお前ボッチになんの?」
「ボッチの桐原に言われたくないけど!」
二人の掛け合いを背に離れ、教室へと戻る。女の子同士、カップルなんかが空間を埋めていた。そういえば、プラネタリウムの完成形、確認できないまま始まっちゃったな。
「なにやってんだよ」
「あ、瀬名くん……って、なんかやたらいっぱい買い込んだね」
瀬名くんの手元には、焼きそばのパックに、りんご飴、ポテトリング、イカ焼きと、一人で食べるにしてはなかなかの量が用意されている。
「祭りだから。食べないと損。最後の晩餐ぐらいの勢いで食べねえと」
「にしても買いすぎだけどね」
思わず苦笑がこぼれていくと、ずいっとりんご飴が差し出される。
「これは綿世の」
「え、なんで……」
「好きだったんだろ、これ」
『私、お祭りは絶対りんご飴買ってたなあ』
ふと、瀬名くんと交わしたやり取りを思い出す。そっか、そんな話もしたんだっけ。
「うん、……好き。ありがとう」
「どういたしまして」
何気ないことを、頭の片隅にでも置いておいてもらうって、なんだかすごく奇跡だ。
こんなにも人がいる中で、私と瀬名くんには接点があって、隣にいる。
それは当たり前なんかじゃなくて、奇跡の連続なんだと、ふと感慨深くなってしまう。
「あれだな、これは最後にさ」
「最後に?」
「そりゃあもちろん──」
文化祭が、終わろうとしていた。
そう言いながらポケットティッシュをさり気なく出すあたり桐原くんの几帳面さがうかがえる。意外。
「桐原くん、私これから委員の仕事があって、琴音が一人になっちゃうのでどうぞ一緒に」
「え、ちょっと三春!」
「え、なにお前ボッチになんの?」
「ボッチの桐原に言われたくないけど!」
二人の掛け合いを背に離れ、教室へと戻る。女の子同士、カップルなんかが空間を埋めていた。そういえば、プラネタリウムの完成形、確認できないまま始まっちゃったな。
「なにやってんだよ」
「あ、瀬名くん……って、なんかやたらいっぱい買い込んだね」
瀬名くんの手元には、焼きそばのパックに、りんご飴、ポテトリング、イカ焼きと、一人で食べるにしてはなかなかの量が用意されている。
「祭りだから。食べないと損。最後の晩餐ぐらいの勢いで食べねえと」
「にしても買いすぎだけどね」
思わず苦笑がこぼれていくと、ずいっとりんご飴が差し出される。
「これは綿世の」
「え、なんで……」
「好きだったんだろ、これ」
『私、お祭りは絶対りんご飴買ってたなあ』
ふと、瀬名くんと交わしたやり取りを思い出す。そっか、そんな話もしたんだっけ。
「うん、……好き。ありがとう」
「どういたしまして」
何気ないことを、頭の片隅にでも置いておいてもらうって、なんだかすごく奇跡だ。
こんなにも人がいる中で、私と瀬名くんには接点があって、隣にいる。
それは当たり前なんかじゃなくて、奇跡の連続なんだと、ふと感慨深くなってしまう。
「あれだな、これは最後にさ」
「最後に?」
「そりゃあもちろん──」
文化祭が、終わろうとしていた。