良いことを言われたような気もするけど、それをぶち壊せるだけの性格が残念でならない。
「瀬名くんは本読むの?」
そう聞いてみながら、いや読んでるとこなんて見たことないなと答えが出てしまう。そんな私に対して彼は、
「まぁエロ本ぐらいなら」
などと茶化して笑う。
聞いた私が馬鹿だったと頭を抱えたくなり「あっそ」と冷たくあしらう。
瀬名くんはどちらかというと本よりスマホを見ていること圧倒的に多い。今時の若者らしいと言えばきっとそうなのだろう。軽くスマホ依存症を疑っているほど、彼の手にはよくスマホが握られている。
「瀬名くんってスマホでいつも何してるの?」
「え、やだ、プライベート聞かないでよ」
「そんな踏み入ったつもりは全然なかったんだけど」
「踏み入ると言えばさ」
「うん?」
「俺ら付き合って二年迎えたじゃん?」
「……その話まだ引っ張ってくるんだね」
黒歴史化したその思い出は出来れば思い出したくなかったけれど、どうやら瀬名くんはネタとしてすでに扱っているらしい。
「面白いからそういうことにしておこ」
「何も面白くないよ」
あの噂があって私は中学時代を寂しく過ごす羽目になって、反対に瀬名くんは変わらず友達と普通に話してて〝この違いってなんなんだろ〟なんて考えたりもしていた。
今となってはその本人を目の前にしてネタにされるんだから、自分の中でも少しずつ、あの出来事が風化出来てきているのかもしれない。
思い出しても傷が抉られることはなくなった。それはいい意味であの出来事がちゃんと消化されているということなのだろうか。
もしそうなら、きっとそれは瀬名くんのおかげなのだろう。
こうして笑い話として話題に上げてくれる瀬名くんは、私の傷も全部見透かしてくれているのかも。
「何?」
「あ……いや」
そう言い澱んで、視線をちらちらと上履きに落としながら、意を決して言葉を出す。
「瀬名くんは本読むの?」
そう聞いてみながら、いや読んでるとこなんて見たことないなと答えが出てしまう。そんな私に対して彼は、
「まぁエロ本ぐらいなら」
などと茶化して笑う。
聞いた私が馬鹿だったと頭を抱えたくなり「あっそ」と冷たくあしらう。
瀬名くんはどちらかというと本よりスマホを見ていること圧倒的に多い。今時の若者らしいと言えばきっとそうなのだろう。軽くスマホ依存症を疑っているほど、彼の手にはよくスマホが握られている。
「瀬名くんってスマホでいつも何してるの?」
「え、やだ、プライベート聞かないでよ」
「そんな踏み入ったつもりは全然なかったんだけど」
「踏み入ると言えばさ」
「うん?」
「俺ら付き合って二年迎えたじゃん?」
「……その話まだ引っ張ってくるんだね」
黒歴史化したその思い出は出来れば思い出したくなかったけれど、どうやら瀬名くんはネタとしてすでに扱っているらしい。
「面白いからそういうことにしておこ」
「何も面白くないよ」
あの噂があって私は中学時代を寂しく過ごす羽目になって、反対に瀬名くんは変わらず友達と普通に話してて〝この違いってなんなんだろ〟なんて考えたりもしていた。
今となってはその本人を目の前にしてネタにされるんだから、自分の中でも少しずつ、あの出来事が風化出来てきているのかもしれない。
思い出しても傷が抉られることはなくなった。それはいい意味であの出来事がちゃんと消化されているということなのだろうか。
もしそうなら、きっとそれは瀬名くんのおかげなのだろう。
こうして笑い話として話題に上げてくれる瀬名くんは、私の傷も全部見透かしてくれているのかも。
「何?」
「あ……いや」
そう言い澱んで、視線をちらちらと上履きに落としながら、意を決して言葉を出す。