自分の幸せを考えたとき、何も浮かばなかった。これといって自慢出来るものもなく、これからも出来るんだろうかという不安さえぽつんと浮かんでしまう。
「なにしてんの」
 すっ、と現れたその横顔に思わず心臓が飛び出そうな程驚いた。
 そんな私を見て「はは、その顔いいね」と面白そうにする趣味の悪い青年こと、瀬名くん。
「もっと普通に出てよ……」
「それじゃあ綿世さんの驚いた顔見れないじゃん」
「見なくていいよ」
 この人はどこまでも我が道を行くタイプなのだろう。
 呆れた息を吐けば「ああ、これね」と感想文に目をやる。
「綺麗ごとばっかだよな、これ」
「そう?」
「見てて吐き気する」
 そんな言葉をいつものお茶らけたトーンで言うものだから一瞬言葉が詰まる。
「そんこと……ないよ」
 笑ってるようで、目の奥が笑っていない。
「俺は前まで貼られた悪口ばっかの感想文の方が好きだけどね」
 ぱっと切り替わるように、いつもの雰囲気を纏った彼に少し安堵しながら、
「……あっちの方がどうかと思うけど」
 まさかあれを瀬名くんにも読まれていたなんて、と背中がぞわっとする。
「最近は見ないけどね」
「……そうだね」
「書かないの?」
「……え」