誰かに愛されてる人を、私は嫌ってる。
 それは、とても心が澄んでるとは言わない。私は人のことなんて言えない。
「もういいっていいって。友達ごっことかやめてよ、寒いから」
 渡辺さんの容赦ない言葉は私の心をしっかりと抉る。
 痛い、胸が痛い。
 なんで、こんなに冷たいんだろう。
 なんで、温かくできないんだろう。
「邪魔」
 ぴしゃり、とその空気に似合わない音が切り裂くように落とされる。
 嫌悪感丸出しの登場人物は、出入り口付近にいた渡辺さん達に再度「どけ」と冷たく払う。
 目つきの悪い桐原くんの登場に場はしーんと静まり返り、冷たくあしらわれた渡辺さん達は「うざ」とだけ言い残しては教室を出て行く。
「……桐原くん」
 来てくれた、ちゃんと。
「ありがとね、綿世さん」
 吐息交じりに聞こえた、か弱い声。我慢していたなにかをまだ堰き止めるように、香川さんは微笑んでいる。
「なあ」
 突然桐原くんから声を掛けられるものだから思わず「ひゃい!」と声が上ずってしまう。
「あれ、もうポストにいれんなよ」
「え」
「だから、あれ、手紙」
 途端に思い出されるその存在に所在なさげに手元に視線を落とす。
 書いた内容を思い出すと今更になって恥ずかしくなる。〝お願いだから学校に来てくださいお願いします本当に〟などと懇願するように書き綴っていた気がする。
「あの……読んだ?」
「ああ。お願いしますばっかで気持ち悪かった」
 ですよね、そうですよね、自分でもそう思います。
 項垂れるように頭を下げれば香川さんが「え、手紙?」と驚いた顔を見せる。
「学校に来てもらえるように、その手紙を届けてまして……」
 罪を告白するようなトーンで白状すれば、
「あれはストーカー行為だった」