「……あの」
 声が震えそうになる。
 何してるんだろ、私。何、話しかけてるんだろ。
「なに?」
底冷えのするような声が心臓をぐっと掴まれる。
「黙ってれば、何言ってもいいことになるの……?」
「は?」
 絞り出たそれは、何とも力弱く、痛々しいもの。
「……その言葉に、どれだけ責任が持てるの?」
 吐き捨てた言葉をまるでゴミのように、なんてことない顔で放り出して、果たしてそれはどこに捨てられているのだろうか。
「言葉の傷って……絶対に消えないよ」
 乱暴に捨てられたそれを、どうして言われた側はずっと〝心〟に持っていないといけないのか。
 捨てたくても捨てられない。
 ずっと、ずっと心にある。
「……たった一つの言葉で、その人がどれだけ今後苦しむか」
 考えたらわかることを、どうして考えられないんだろう。
 なんで、考えることを放棄してしまうだろう。
「なに、急にしゃしゃり出るじゃん」
 目を合わせ、馬鹿にするような言葉は、どこにも後悔の色が滲んでいない。
〝だから何?〟
 そう開き直って、笑うだけの、どうしようもない人たち。
 ――でも、私だって、
 きっと同じ醜い部分がある。
 今までに放ってきた言葉たち、全てに責任が持てるかと言われれば到底それは無理な話。言ったことすら覚えてない言葉だってある。
 それで誰かを傷付けてしまったこともあるだろうし、反省してと言われたって私は出来ないかもしれない。
 現に私は本の世界の登場人物の悪口ばかりを綴った作文をこの世界に放出している。
 架空の世界だからそれが許されるのかと問われれば、それはきっとノーだと思う。
 だって、それを書いた作者は、自分の作品に誇りを持っているはずなんだから。
 自分の愛するキャラを貶されて嬉しい人なんてそんなのいないに等しいって言うのに。
 私だって人のことなんて言えない。
 この人たちだって、私から見たらものすごく嫌いで、関わりたくないと思うけれど、でも、少なからず誰かに愛されてるのだと思う。
 家族だったり、友達だったり、恋人だったり。