「……あの、ごめんね」
もう通い慣れたと言っても過言ではないかもしれない視聴覚室で、私は席に座るなり瀬名くんに謝罪の言葉を伝えた。
「え、なにが?」
「先週……真剣に考えて、なんて言っちゃって。真剣に考えるの、私の方だったのに」
言いたいことばかりが先行して、自分の気持ちが溢れ出てしまった。
本当は話し合いの時にすぐに謝りたかった。でも空気的に出来なくて、話し合いが終わったあとも瀬名くんに話しかけるタイミングが見つからなくて、結局放課後になってしまった。
そんな私に彼はなんてことない顔で「いや、別にいいって」と言う。
「いいんじゃん? 綿世さんなりに色々考えてたんだろうし。決まったからもう流そうよ」
怒られるとは思っていなかったけれど、彼は簡単に私の言葉を流してくれた。
真剣にとか、それ以外にも酷い言葉をぶつけてしまったのに、彼は全く気にしていないような表情でプリントを差し出す。
「ちゃんと意見言えるようになったんだなって思ったし」
「え……?」
「ノーが言えるかはまだ微妙だけど、まぁ一歩進歩したとは思うよ」
謎に上からの発言に首を傾げながら「あ……りがとう」とよく分からない返しをしてしまった。
「ほら、綿世さん書いてよ」
今まで真っ白だった希望表の欄に、とんとん、と指をさす瀬名くんに「……うん」と小さく頷いた。
『わ、私は——……プラネタリウムが、いいと思う』
あの時、私が言った言葉に、全員が全員納得したわけではなかっただろうけど、それでも瀬名くんは「そっか」とやさしい笑みを浮かべていた。
「でもなんでプラネタリウム?」
空白だった欄にその言葉を記した私に瀬名くんが問いかける。
「……上、向いた方がいいかな、って思って」
「上?」
不意に目に入る上履きに、失笑した笑みがこぼれる。
「……私、都合が悪くなると、すぐ下向いちゃうから。上履き見るのが癖なんだ。だから完全に個人的な意見なんだけど、そういうのやめたいって思って」
下を向く逃げは、瀬名くんを見てやめたいと思った。
「上を向いてると、嫌なことって考えないんだって。空とか、星とか、そういうの見てると、あまりネガティブ思考にならないって……テレビで言ってて」
「へぇ」
「皆も、もしかしたら下ばかり向いてるのかなって。あ、ほらスマホとかさ、自然と下を向くことが多いから。上を向いてれば、嫌な出来事とか、嫌な言葉とか、浮かばないんじゃないかなと」
それは、祈りに近いものかもしれない。
そうなってくれたらという、理想の話。
実際にそんなのは上手くいかないことぐらい分かってるけれど、それでも、藁にも縋るような気持ちで、掴んでみたかった。
もう通い慣れたと言っても過言ではないかもしれない視聴覚室で、私は席に座るなり瀬名くんに謝罪の言葉を伝えた。
「え、なにが?」
「先週……真剣に考えて、なんて言っちゃって。真剣に考えるの、私の方だったのに」
言いたいことばかりが先行して、自分の気持ちが溢れ出てしまった。
本当は話し合いの時にすぐに謝りたかった。でも空気的に出来なくて、話し合いが終わったあとも瀬名くんに話しかけるタイミングが見つからなくて、結局放課後になってしまった。
そんな私に彼はなんてことない顔で「いや、別にいいって」と言う。
「いいんじゃん? 綿世さんなりに色々考えてたんだろうし。決まったからもう流そうよ」
怒られるとは思っていなかったけれど、彼は簡単に私の言葉を流してくれた。
真剣にとか、それ以外にも酷い言葉をぶつけてしまったのに、彼は全く気にしていないような表情でプリントを差し出す。
「ちゃんと意見言えるようになったんだなって思ったし」
「え……?」
「ノーが言えるかはまだ微妙だけど、まぁ一歩進歩したとは思うよ」
謎に上からの発言に首を傾げながら「あ……りがとう」とよく分からない返しをしてしまった。
「ほら、綿世さん書いてよ」
今まで真っ白だった希望表の欄に、とんとん、と指をさす瀬名くんに「……うん」と小さく頷いた。
『わ、私は——……プラネタリウムが、いいと思う』
あの時、私が言った言葉に、全員が全員納得したわけではなかっただろうけど、それでも瀬名くんは「そっか」とやさしい笑みを浮かべていた。
「でもなんでプラネタリウム?」
空白だった欄にその言葉を記した私に瀬名くんが問いかける。
「……上、向いた方がいいかな、って思って」
「上?」
不意に目に入る上履きに、失笑した笑みがこぼれる。
「……私、都合が悪くなると、すぐ下向いちゃうから。上履き見るのが癖なんだ。だから完全に個人的な意見なんだけど、そういうのやめたいって思って」
下を向く逃げは、瀬名くんを見てやめたいと思った。
「上を向いてると、嫌なことって考えないんだって。空とか、星とか、そういうの見てると、あまりネガティブ思考にならないって……テレビで言ってて」
「へぇ」
「皆も、もしかしたら下ばかり向いてるのかなって。あ、ほらスマホとかさ、自然と下を向くことが多いから。上を向いてれば、嫌な出来事とか、嫌な言葉とか、浮かばないんじゃないかなと」
それは、祈りに近いものかもしれない。
そうなってくれたらという、理想の話。
実際にそんなのは上手くいかないことぐらい分かってるけれど、それでも、藁にも縋るような気持ちで、掴んでみたかった。