そんなの……そんなの、仕方がないじゃないか。
 一度傷付いた心は、自分一人ではどうしようもなくて、そうならないための工夫をするしかなくて、だからそんなの、最低なんかじゃなくて、当たり前なはずで。
「ごめんね、綿世さんをいっぱい巻き込んで」
 巻き込んで──私は、巻き込まれたのだろうか。
「もう、関わらないから。綿世さんも私と話してるの見られるとハブられるよ」
 ハブられる──中学のときのトラウマが蘇る。
 だから、もうそんなことにはなりたくなくて、傷付けられたくなくて、人と関わることを避け、一人でいることを選んだ。
『一人が楽なら、なんでそんな羨ましそうに周りを見てんの』
 瀬名くんの言葉が頭にこびりつくようにして離れなかった。
 羨ましかった、周りが。私と違って楽しそうに高校生活を送ってる周りが羨ましくて、そこに自分が入っていけない事実が悔しくて、一人が楽だなんて思おうとして……でも、そんな風に思えるはずもなかった。
 だって、あのとき、香川さんに三春ちゃんと呼ばれたとき、本当は嬉しくて仕方がなかった。下の名前で呼ばれる、それだけでこんなにも嬉しいだなんて思いもしなかった。
「あ、あのね」
 怖くなる。人に話をするのは。また聞いてもらえないんじゃないかって。向き合ってもらえないんじゃないかって思って、声が震えそうになる。
「わ、私もね、中学の時に仲間外れにされたことあって……ずっとそれから一人で、だから、香川さんの気持ち、わかるから」
 怖いよ。やっぱり。人と話すのって。だって、どれだけ必死に伝えても、それが一方的だったら意味がないんだもん。
 意味がないことを、どうして私は訴えているんだろう。
「慣れないよ……ハブられるのって。悪口とかも、いつ言われたって傷付くし……鍛えられないよ、こんなの」
 どうせ死ぬのに。そんな私が何言ったって意味がないのに。
 なんで、私、こんなに必死なんだろう。