頭の中を駆け巡るのは、大体がその日あったことだ。

壊れたテレビみたいに、そんな考えたくもない教室の様子が流れ続ける。
そのせいで、目を閉じても全く気が休まらない。

どうしても眠れない日は、ドラッグストアで買った睡眠導入剤を飲んでいたけれど、薬が催す眠気は気持ち悪くてあまり好きになれなかった。

眠れなくなってからというものの、お気に入りの歌手のアルバムを聴きながらベッドで過ごすのが日課になっていた。

最初のうちは、アルバムを一周する頃には眠りにつけていた。
しかし日を追うごとに、気付けば二週、三週、五週と気が付けば永遠にループしていた。

だけどその日は、もう何度聴いているか分からないくらい、イヤホンから音が流れっぱなしで、その曲を聴き続けるのが苦痛になってしまった。


もう、音楽すら救ってくれないらしい。 


何かに見放されたような気がして、その日初めて、自分の部屋に一人でいることに耐えられなくなった。

もう十二時をとうに過ぎて、家族が寝静まっているのをいいことに彼女は一人でそっと家を出た。