「俺はずっと、ただ黙って耐えてた。毎日、絶望的な気持ちで生きてた。だけどイチゴに会って、イチゴが昼の世界で頑張ってるのを見て俺も頑張らなきゃって思えた。それで初めてあいつらに反抗して……ボコられた。強くなりたいとか思って金髪にして、ピアス開けて……。だけど何も変わらなかった。こんなナリしてほんとは弱っちいんだよ。」

訥々と語るバニラのところにはまだ空の光が届いていなくて、薄暗い闇に包まれてどんな表情をしているかは分からない。


「ははっ……情けないだろ、俺。」


バニラはそう言って涙を堪えるように上を向いて、手の平で目を覆った。

どうして、こうなるまで何も気付いてあげられなかったんだろう。

どうして、どうして、と荒波のような感情が渦巻く。

だけど精一杯の気持ちで、バニラに語りかける。

「そんなことない!弱いとか強いとかどうでもいいの。バニラは優しくて、溶けそうなくらい温かくて……私にとってはただそれだけで十分なの。」