お決まりというかなんというか。
その頃、夜がなかなか眠れなかった。
夜はとても寂しい。
押し潰されそうなほどに。
目を閉じると、教室の喧騒が目に、耳に、浮かび上がる。
――日沼センセーって、彼女いるんですか?
教室のドア付近の廊下で、隣のクラスの担任がクラスで一番目立つ女子グループに取り囲まれていた。
――いないでしょ。だってセンセー、仕事バカだもん。彼女いたら、あそこまでできないって。
先生が答える前から彼女達は言いたい放題だ。
――おい、お前らぁ。先生に向かってなんだ、その口の利き方は。
咎める言葉とは裏腹に、三十も半ば過ぎたであろう日沼先生は女子高生に囲まれて満更でもない様子だった。
――お前らみんな楽しそうだな。早く弁当食えよ。
みんな、ね。と彼女は心の中でそう呟いた。