夏が、もう終わろうとしていた。
張り込みを始めてから、既に一ヶ月近く経とうとしている。
その間、真夜中の公園に現れたのは酔いつぶれて足の縺れた様子のサラリーマンと、気まぐれに姿を現す野良猫だけだった。
もうだめかもしれない、そんな考えが何度も頭を過ぎった。
それでもやめなかったのは、自分がバニラに〝アイス仲間〟以上の感情を持ち始めていたことに気付いたからだった。
もう、今日も諦めて帰ろう。
そう思ってベンチから腰を上げた矢先、街灯で照らされた公園の入り口に影が落ちた。
その影は、ゆらゆらと左右に揺れていた。だけど酔っ払いのそれとは違って、震えるような、崩れ落ちそうな影だった。