久しぶりに足を踏み入れた公園には、初めて来たあの日と同じように誰もいなかった。

あの日の寂しさが、苦しさが、蘇ってくるようだった。

だけどあの日は、私の前にバニラが現れてくれた。

それからアイスをくれて、私のこと勝手に『イチゴ』って呼び始めて、それから、それから……。


「……いつでもここにいるって言ったじゃん。嘘つき……。」


泣きそうになりながら、そう呟いた。

自分勝手なセリフなのは分かってる。

怖くて堪らない夜に寄り添って、救ってくれたのはバニラだった。
それなのに私は自分が救われて、眠れるようになってからバニラの存在を忘れかけていた。

まだ中学生とおぼしき男の子が、たった一人で夜の公園にいるなんて、普通に考えておかしいに決まってる。

初めて出会ったあの日だって、きっと偶然じゃない。

バニラも苦しくて、寂しくて仕方がなかったのだ。だから私の寂しい夜に付き合い続けてくれたんだ。


今だから分かる。

夜の辛さを知らない人間が、わざわざ自分の時間を削ってまで隣にいてくれるはずがないと。

バニラは一体どれだけの辛い夜を一人で乗り越えてきたのだろう。

どうして、何も気付いてあげられなかったんだろうね。私ばっかり、聞いてもらって。私ばっかり……。