バニラはどうして、ずっと一緒にいてくれたんだろう。
心のどこかでずっと引っかかっていた疑問が浮かび上がってくると同時に、はっきりと『会いたい』と思った。
それは今までの、眠れない夜に仕方なくバニラと会うような時のそれとは違って、突き動かされるような感情だった。
バニラが、待っているような気がした。
この世界のどこかで待っているような――。
彼女はその夜、十二時を合図にそっと家から抜け出した。
久しぶりに見上げた夜空は星ひとつ出ていなかった。
何かを見失ってしまいそうで、公園に向かう足取りが心なしか速くなる。
あれは夢なんかじゃない。絶対に。
そう自分に言い聞かせてはやる気持ちを抑え、住宅街を抜けていく。
ーーこんなに遠かったっけ。
いつもの公園に向かうはずの道が、その日はやけに長く感じた。