いつもの夜の公園に、バニラが鞄を提げてやって来たことがあった。
普段は手ぶらか、コンビニの袋を持ってきているのをたまに見るくらいだった。
「何持ってきたの?」とバニラに訊く。
「はい。ホントは花火の方が良かったんだろうけど夜中だし、バレたら色々まずそうだからこれで我慢な。」
そう言って渡されたのは、シャボン玉の道具だった。それも、小さい子供達がよく持っているような定番のあれ。
ぷっ、と思わず笑いがこぼれてしまった。
「な、なに笑ってんだよ。花火したいって言い出したのはお前だろ。……花火は無理だけど。」
どうやらバニラは、私がこの前「花火したいなぁ」と何気なく呟いたのを叶えてくれようとしていたらしい。
「だ、だからって、あははっ」
「……別にいいだろ。シャボン玉でも。」
バニラはフードに隠れた耳まで真っ赤になっていた。
見た目からして火遊びの方が似合いそうなのに、シャボン玉って……。
こういうところ、かわいいんだよなぁ。