ぱたぱた、と水がこぼれ落ちていた。
泣き出してしまった私にバニラが少し声を落として「大丈夫だよ」と優しく言った。
初めて会ったばかりの人、しかも自分より年下の男の子の前で泣くなんて……。
そして、ふいに「イチゴ」とバニラが呼んだ。
目の前にバニラが立っていて、ブランコに座っている彼女を見下ろす形になっていた。
「…ふっ、な、なに……?」
「もう始まってんだよ。何も始まってないって言ってたけど、俺たち今日ここで出会っただろ。ガッコーとか昼の世界が冷たくても、どれだけ世界が怖くても、俺とお前は今ここにいるから。これからもいるから、もう一人じゃない。」
バニラの後ろにはたったひとつの明るい星が、こっちだよと手を引くように眩く光っていた。
「俺たち、アイス仲間だろ?」
そう言って笑ったバニラの笑顔は可愛らしくて、とても年相応に思えた。