「イチゴは、こんな夜中にどうしたんだよ?」

バニラは思いついたようにそう聞いてきた。この人の距離の詰め方は、遠慮がないのに自然で心地いい、そう思った。
 

「……眠れなかったの。色々考えちゃって。」


「そっか。上手くいってないんだ。」


「上手くいってないどころじゃないよ。……私だけ、何も始まってないの。」


二人とも何が、とは言わない。
だけど自分で自虐っぽく言っておいて、その言葉に現実を突きつけられた気がして傷つく。

着々と教室にできあがっていくグループや築き上げられていく信頼関係。
一人だけ取り残されていく、いたたまれない感覚。

明日からも、何も変わらないんだろうな。

そう思うと、この少し優しい夜に縋りたくなった。