少年がこっちをじっと見つめながら訊いた。

「なぁ、名前は?」



「え、えっと……」 


「じゃあ、イチゴ。イチゴって呼ぶわ。」

こんな真夜中に、こんなところで出会った人に名前を教えていいものかという一瞬の逡巡を遮るように、彼はそう言った。


「……へ?なんで?」


「俺のことは、バニラでいいよ。」


そう言って彼はアイスの蓋を見せて笑った。


「何それ、変なの。」


単純すぎるネーミングが可笑しくてつられて笑ってしまった。

久しぶりに笑った気がする。


その日から二人は、お互いを『バニラ』、『イチゴ』と呼ぶようになった。