「次の授業って、第二理科室だよね?」
彼女は、窓際の席で話している二人組の女の子に尋ねた。実際には普通の声なのに、問いかける声が上ずってしまったように感じる。
「え?……うん、そうだよ。」
ショートカットの毛先が無造作にばらばらになっている女の子――志賀谷さんが答える。
知ってる。
次の授業の場所が第二理科室だと朝礼の時に先生が言っていたのは、ちゃんと聞いていた。
確認が取りたかったわけでもない。
――申し訳程度でも、クラスメイトと話したかっただけだ。
志賀谷さんはもう一人の女の子、黒縁の丸眼鏡をかけた女の子に困ったように視線を向ける。
確か――マツバラさん、いやマツヒラさんだっけ。
二人はそれ以上、何も言ってこない。
入学式の日、たまたま隣の席だった志賀屋さんは明るい笑顔で「緊張するよね」と私に声をかけてくれた。だから一番話しかけやすそうだと思って、声をかけたのに……。
「あ、ありがとう。」
これ以上気まずくならないうちにと思い、そう言って足早に教室を後にした。