「はあああ!!」
斧と刀がぶつかり合い、激しい火花が散る。
「グゥゥ……グアアアアア!!」
ジェネラルオークも、負けじと覇気を出し攻撃に全力を注ぐ。
一対一なら、俺達は負けない……!
拮抗しているかに見える戦い。
しかし、徐々にジェネラルオークの身体には切り傷が増え始める。
体力と精神力をどんどん消耗し、ジェネラルオークの叫び声も必然的に増えてくる。
「グアアアアアア!!!」
「!」
長期戦を嫌ったジェネラルオークが、思い切り斧を振り上げる。
一撃必殺、この一撃で一気に勝負を決める気だ。
その隙を、ホロウは見逃さなかった。
すぐさま低姿勢をとると、横一線に薙ぎ払う。
俺の放った斬撃はジェネラルオークの脚を切り裂き、ジェネラルオークは一気に態勢を崩す。
「――――ッ!!」
前のめりに倒れこむジェネラルオーク。
俺は一気に地面を蹴り上げると、一気に跳躍する。
「もらった――っ!!」
倒れこむジェネラルオークの頭が、お辞儀をするように落ちる。
俺はその落ちた視線の外から、差し出される首に空中で回転しながら渾身の一撃をお見舞いする。
切り傷しか付けられなかったジェネラルオークの皮膚に、刃が通る。
「グオアアアアアアアアア!!!!」
激しい咆哮。
最後の断末魔の叫び。
そのまま首は斬り落とされ、ジェネラルオークは力なく地面に倒れこんだ。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
俺は地面に着地すると、茫然と立ち尽くし、肩で息をする。
頬を伝う汗をぬぐい、俺は手に握ったカスミを見つめる。
『ナイス、ホロウ!! 私は信じてたわよ!!』
黄色い歓声が、脳内に走る。
その声に、俺は思わず笑みが零れる。
「終わった……!」
俺はくたくた~っと力が抜けると、両手を後ろに着いて地面に座る。
すると、ドロンっとカスミが人型に戻り、抱き着いてくる。
「わっ!」
「お疲れ様! いや~ホロウならやれると思ってたわ!」
カスミは嬉しそうにニコニコとしている。
「はは、カスミのおかげだよ」
「ううん、ずっとホロウが頑張って剣を磨いてきたからよ」
「じゃあ、二人の力ってことで」
「そうね。ジェネラルオークはなかなか強敵だったわね」
カスミはジェネラルオークの死体を見ながら言う。
「そうだね。本物の野生の魔物はなかなか手ごわいね」
「ふふ、でも結果だけ見ればホロウの圧勝よ! 命のやり取りって、経験が物を言うからね」
「そっか……」
これくらいの運動は普段からカスミとの訓練でしている。それでもこの疲労感があるのは、精神を極限まで切り詰め集中していたからこそなんだろうなあ。
結構テンパってたのかもしれない。
「まあでも、一度乗り越えたんだから次からはもっとうまく行けるわよ! ジェネラルオークに無傷何て、普通はありえないんだから!」
カスミはキラキラとした目で嬉しそうに言う。
もっと精進する必要がある。
ヴァレンタインさんとも俺の剣は互角だった。剣の実力には自信があるんだ、後は経験を積むだけだ。
「うん……がんばろう!」
「その意気よ!」
「……よし、リーズたちの所に行こう。もうオークの声がしてないから終わったのかもしれないけど。もしまだ戦ってるなら早く助けないと」
「あら、優しいねホロウは。オークくらいあの人たちだけでも大丈夫だと思うけど」
「油断は厳禁、だろ?」
俺の言葉に、カスミは確かにそうねと肩を竦め、すぐさま刀に戻る。
俺は駆け足でリーズたちの向かった小部屋へと向かう。
今ならオークにも負ける気はしない。
少しして、小部屋が見えてくる。
「あ、あそこ――」
瞬間、何か変な感覚を覚える。
何故か額から、ツーっと汗が垂れる。
「……?」
俺はその汗を拭う。
そして、嫌な悪寒が身体を走る。重々しい空気感。
小部屋に近づくほど、それはどんどんと大きくなっているように感じた。
「……カスミ」
『……ええ、私も感じてるわ。これは……《《あの夜》》みたいな……』
リドウェルでヴァレンタインに追われたあの夜。
路地で死体を見たときのような、何かが居るという感覚。
空間が変わった様子はないから、人払いの魔術ではない。
純粋に、この先から感じるプレッシャー。
『それに……ジェネラルオーク戦の前に感じたあの感じ……もしかして、これが……』
カスミからも緊張感が伝わってくる。
俺は無意識に、ごくりと唾を飲み込む。
見たくない。進みたくない。何かが変わってしまいそうなそんな予感が、小部屋の入口から漂っていた。
けれど、だとしたら尚更行くしかない。
カタカタと、カスミが揺れる。――いや、カスミを握る俺の手に力が入り過ぎているのだ。
「……行くよ」
『……えぇ』
俺は恐る恐る岩に手をつきながら、ゆっくりと小部屋の中を見る。
地面にはオークの死体が転がっている。
そして、その中央に立っていたのは一人の女性だった。
それは、リーズやシアではなかった。
後ろ姿の銀色の髪を女だけが、ただ一人この部屋で佇んでいる。
その左手には、俺と同じ武器、刀が握られている。
女はこちらの気配に気が付くと、ゆっくりと振り返る。
その顔は綺麗で、そして返り血を浴びて頬が赤く染まっていた。
その血を拭いながら、女性は笑みを浮かべる。
「遅かったわねえ。やっと会えたわ」
女性は、妖艶な声色でそう俺達に聞こえるように言う。
誰だ、この人は……。
混乱で、俺の視野は狭まっていた。
転がっている死体はオークだけじゃなく……。
その女性の右手には、誰かが掴まれていた。
一瞬誰だか分らなかったが、その黒髪とローブ姿で気付く。
あぁ、彼は――。
「リーズ……!!」
斧と刀がぶつかり合い、激しい火花が散る。
「グゥゥ……グアアアアア!!」
ジェネラルオークも、負けじと覇気を出し攻撃に全力を注ぐ。
一対一なら、俺達は負けない……!
拮抗しているかに見える戦い。
しかし、徐々にジェネラルオークの身体には切り傷が増え始める。
体力と精神力をどんどん消耗し、ジェネラルオークの叫び声も必然的に増えてくる。
「グアアアアアア!!!」
「!」
長期戦を嫌ったジェネラルオークが、思い切り斧を振り上げる。
一撃必殺、この一撃で一気に勝負を決める気だ。
その隙を、ホロウは見逃さなかった。
すぐさま低姿勢をとると、横一線に薙ぎ払う。
俺の放った斬撃はジェネラルオークの脚を切り裂き、ジェネラルオークは一気に態勢を崩す。
「――――ッ!!」
前のめりに倒れこむジェネラルオーク。
俺は一気に地面を蹴り上げると、一気に跳躍する。
「もらった――っ!!」
倒れこむジェネラルオークの頭が、お辞儀をするように落ちる。
俺はその落ちた視線の外から、差し出される首に空中で回転しながら渾身の一撃をお見舞いする。
切り傷しか付けられなかったジェネラルオークの皮膚に、刃が通る。
「グオアアアアアアアアア!!!!」
激しい咆哮。
最後の断末魔の叫び。
そのまま首は斬り落とされ、ジェネラルオークは力なく地面に倒れこんだ。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
俺は地面に着地すると、茫然と立ち尽くし、肩で息をする。
頬を伝う汗をぬぐい、俺は手に握ったカスミを見つめる。
『ナイス、ホロウ!! 私は信じてたわよ!!』
黄色い歓声が、脳内に走る。
その声に、俺は思わず笑みが零れる。
「終わった……!」
俺はくたくた~っと力が抜けると、両手を後ろに着いて地面に座る。
すると、ドロンっとカスミが人型に戻り、抱き着いてくる。
「わっ!」
「お疲れ様! いや~ホロウならやれると思ってたわ!」
カスミは嬉しそうにニコニコとしている。
「はは、カスミのおかげだよ」
「ううん、ずっとホロウが頑張って剣を磨いてきたからよ」
「じゃあ、二人の力ってことで」
「そうね。ジェネラルオークはなかなか強敵だったわね」
カスミはジェネラルオークの死体を見ながら言う。
「そうだね。本物の野生の魔物はなかなか手ごわいね」
「ふふ、でも結果だけ見ればホロウの圧勝よ! 命のやり取りって、経験が物を言うからね」
「そっか……」
これくらいの運動は普段からカスミとの訓練でしている。それでもこの疲労感があるのは、精神を極限まで切り詰め集中していたからこそなんだろうなあ。
結構テンパってたのかもしれない。
「まあでも、一度乗り越えたんだから次からはもっとうまく行けるわよ! ジェネラルオークに無傷何て、普通はありえないんだから!」
カスミはキラキラとした目で嬉しそうに言う。
もっと精進する必要がある。
ヴァレンタインさんとも俺の剣は互角だった。剣の実力には自信があるんだ、後は経験を積むだけだ。
「うん……がんばろう!」
「その意気よ!」
「……よし、リーズたちの所に行こう。もうオークの声がしてないから終わったのかもしれないけど。もしまだ戦ってるなら早く助けないと」
「あら、優しいねホロウは。オークくらいあの人たちだけでも大丈夫だと思うけど」
「油断は厳禁、だろ?」
俺の言葉に、カスミは確かにそうねと肩を竦め、すぐさま刀に戻る。
俺は駆け足でリーズたちの向かった小部屋へと向かう。
今ならオークにも負ける気はしない。
少しして、小部屋が見えてくる。
「あ、あそこ――」
瞬間、何か変な感覚を覚える。
何故か額から、ツーっと汗が垂れる。
「……?」
俺はその汗を拭う。
そして、嫌な悪寒が身体を走る。重々しい空気感。
小部屋に近づくほど、それはどんどんと大きくなっているように感じた。
「……カスミ」
『……ええ、私も感じてるわ。これは……《《あの夜》》みたいな……』
リドウェルでヴァレンタインに追われたあの夜。
路地で死体を見たときのような、何かが居るという感覚。
空間が変わった様子はないから、人払いの魔術ではない。
純粋に、この先から感じるプレッシャー。
『それに……ジェネラルオーク戦の前に感じたあの感じ……もしかして、これが……』
カスミからも緊張感が伝わってくる。
俺は無意識に、ごくりと唾を飲み込む。
見たくない。進みたくない。何かが変わってしまいそうなそんな予感が、小部屋の入口から漂っていた。
けれど、だとしたら尚更行くしかない。
カタカタと、カスミが揺れる。――いや、カスミを握る俺の手に力が入り過ぎているのだ。
「……行くよ」
『……えぇ』
俺は恐る恐る岩に手をつきながら、ゆっくりと小部屋の中を見る。
地面にはオークの死体が転がっている。
そして、その中央に立っていたのは一人の女性だった。
それは、リーズやシアではなかった。
後ろ姿の銀色の髪を女だけが、ただ一人この部屋で佇んでいる。
その左手には、俺と同じ武器、刀が握られている。
女はこちらの気配に気が付くと、ゆっくりと振り返る。
その顔は綺麗で、そして返り血を浴びて頬が赤く染まっていた。
その血を拭いながら、女性は笑みを浮かべる。
「遅かったわねえ。やっと会えたわ」
女性は、妖艶な声色でそう俺達に聞こえるように言う。
誰だ、この人は……。
混乱で、俺の視野は狭まっていた。
転がっている死体はオークだけじゃなく……。
その女性の右手には、誰かが掴まれていた。
一瞬誰だか分らなかったが、その黒髪とローブ姿で気付く。
あぁ、彼は――。
「リーズ……!!」