ガン! っと、拳大の岩石がウロウロと歩くオークの頭部を直撃する。

 だが、その皮膚には傷は殆どついていない。
 しかし、不意の攻撃に、オークの視線がぎろりとシアの方へと向く。

「きた……!!」

 オークの注意が、オッズたちに向く。
 オッズは振り返ると、シアと目配せし一緒に駆け出す。

「グオアアアアアア!!」

 オークの叫び声が洞窟に響く。
 飛び出した二人に完全にオークの意識が集中している。

 他のオークたちも、その鋭い眼光をシアとオッズに向ける。

 後ろのジェネラルオークはシアたちを視界に捉えると、低く唸る。
 それが合図だったんだろう。瞬間、ジェネラルオークの周りを徘徊していたオークが二体、シアたちを追いかけるように動き出す。

「つ、釣れてる! 釣れてるわ!」

 シアは後ろを振り返りながら言う。

「任務を遂行しよう……!」

 2人はオークからつかず離れずの距離を保ちながら走り、小部屋に入っていく。

 そこは袋小路。オークたちも恐らく理解している。
 だからこそ、焦らず追い詰めるように追いかける。

 そうして、オークとオッズたちの背中が小部屋へと消えていく。

「うまくやってくれよ2人とも……!」

 リーズはそちらを見つめながらそう呟く。
 オークとはいえジェネラルオークの守衛みたいなものだ。油断できる相手じゃない。

 でも、これで予定通りジェネラルオークの周りには3体だけになった。

「いい感じだね」
「あぁ。あとは俺が残りを――」

「グオオオオオアアアアアアアア!!!」

 瞬間、ジェネラルオークの耳をつん裂くような叫び声。
 地面が揺れ、肌が震える。

「完全に戦闘体制に移行しやがった……!」

 リーズの表情が僅かに険しくなる。

 ジェネラルオークの周りの3体は、さっきよりも距離を近づける。
 いつでも連携をとれるように、オーク達はゆっくりと陣形を取り始める。

 さすがと言うべきか、本能でオーク達は警備体制を強化した。

『凄いわね……。このジェネラルオーク、なかなかやるわよ』
『そうみたいだね……。さすがはこのダンジョンでずっと生き残ってきた魔物だけはあるね』

 リーズはゆっくりとこちらを振り返る。

 リーズはじっと俺の目を見ると、ゆっくりと頷く。

 始めるつもりだ。

 当初の予定では、シアたち同様中距離からの攻撃で注意を向け、小部屋へと連れて行くつもりだった。

 でも、オーク達の警戒態勢はそう簡単にそれをさせてくれなそうだ。
 三体のオークは等間隔に並び、ジェネラルオークを守るように固めている。

 もし中距離からの攻撃でオークを釣ろうとすると、恐らくジェネラルオークも一緒に向かってしまう。

 下手をすると一気にリーズに攻撃が行って……。

 だが、リーズの顔は僅かに恐怖に染まってはいたが、どこか自信ありげだった。
 俺ならできる。そう、顔が訴えていた。

 俺は、リーズを信じて頷き返す。
 きっとリーズならやってくれる。

「いくぜ……!」
「信じてるよ……!」

 リーズは一気にオーク達の前に飛び出す。
 瞬間、さっきまでとは比べ物にならない速さでオーク達がリーズに反応する。

 八つの目が、リーズに向けられる。

 しかし、一気には詰めない。
 リーズと間合いを取るように、オーク達が横に展開する。

「まだだ……まだ、まだ……」

 リーズはオーク達の様子を見ながら、自分の立ち位置も調整する。
 そして、オーク達が横一列に並び一歩前に出た瞬間。

「今だ! おらぁ!!」

 リーズの横なぎに振った剣の先から、轟轟と燃え上がる炎の岩が放たれる。

 それは洞窟の低めの天井にぶち当たると、激しい音を立て勢いよく崩れ出す。

 そして地面に落ちた燃える岩石は、メラメラと炎を立ち昇らせ、オークとジェネラルオークの間に炎の壁を作り上げる。

 分断に成功した……!

 リーズは走り出す。
 それを追うように、ジェネラルオークから分断されたオーク達が走り出す。

「悪い、一体釣れてない! でももう行くしかねえ、まかせた!!」

 そう叫び、リーズはオーク二体を引き連れて小部屋へと向かっていく。

 その場に残されたのは、炎の壁の前にいるオークと、その奥に居るジェネラルオーク。そして、俺。

『いつでも準備オーケイよ』
「ああ、やってやろう!」

 俺は刀を腰に入れたまま、オークの前に姿を現す。
 オークは俺に気付き、すぐさま飛び出してくる。

 リーズの炎による攻撃で完全に興奮状態だ。統率は取れていない。
 浮いた駒は、簡単に打てる。

「――ふっ!!」

 俺は居合いで刀を引き抜くと、飛び込んできたオークの身体に刃を滑らす。

 一瞬にしてオークの頭は真っ二つに割かれ、地面に倒れこむ。

「これで一対一だね、ジェネラルオーク……!」

 燃え上がっていた炎は既に落ち着き始め、燻ぶる炎の壁は既に視界を取り戻していた。

 その壁の奥から、赤い眼を光らせたジェネラルオークが苛立たし気に喉の奥を低く鳴らしながらこちらへ歩いてくる。

「グルァアアアア……」
「さあ、はじめよう!」