後方から、セシリアのサポート魔術が飛び交う。
セシリアの魔術の反応を読み取って、前衛の俺はそれを織り込み済みで攻撃を組み立てる。
「すごい……戦いやすい……!」
セシリアは感動しながら俺と息を合わせる。
突貫的なパーティだが、俺の特性がパーティ戦闘の連携を可能にしていた。
しかし、魔術を使えない俺にとって軽々と距離を取るマンティコアの機動力は厄介で、最後の決め手に欠けていた。セシリアの魔術も、お世辞にもマンティコアに致命傷を与えられるような代物じゃない。
だが一方で、マンティコアの攻撃も俺には効かない。
魔術ではない攻撃だが、俺の動体視力ならマンティコアの攻撃など避け、刀で受け止めるのはたやすい。幻影の剣豪たちの剣に比べれば簡単なものだ。
爪と刀、牙と刀。
その二つが激しく何度もぶつかり合い、火花が散る。
「ふッ……!!」
「ガァぁぁぁ!!」
マンティコアの咆哮に負けじと、俺も力を入れる。
とはいえ……間違いなく、今まで戦った中で最強の相手……!
思わず顔がにやける。身体が震えるのを感じる。
いつかカスミが言っていた、武者震いって奴だろう。
生と死の狭間。一つ間違えばあの鋭い爪が俺の肉体を抉り取る。
その局面に置かれ、俺の中の何かが目覚めようとしていた。
『はは、剣豪らしくなってきた……! やろう、ホロウ!』
カスミの嬉しそうな声に、俺は頷く。
目覚める俺の中の血。相手が魔物だということが俺の中の血を目覚めさせる。
1秒でも長く、俺はこの戦いを続けたい。
その思いが、俺にとどめでは無く様々な攻撃を繰り出させ、有意義な実践訓練となっていた。
「まだまだあ!!」
俺はあえて刀を馬鹿正直に脳天へ振り下ろす。
しかし、さすがに慣れてきたマンティコアはそれを器用に躱す。
「さすがに……!」
『でもいけるわよ、ホロウ。そろそろ一気に畳み掛けましょ』
「あぁ!」
あの技で決める。
初の大物、マンティコア。いい訓練になったよ。
後方でセシリアの魔術が発動する反応を感じ取る。
いいタイミングだ。これに合わせる……!
「いくぞ!」
「グウオオアアアアア!」
マンティコアも俺の剣の威力に危機感を感じ取ったか、攻勢に出る。
マンティコアは一気に跳躍し、瞬く間に俺との距離を縮める。
あんぐりと広げた口で、俺に襲い掛かる。
――が、一瞬。
後方より現れた高速の水の砲撃。
セシリアの放った水属性魔術が、マンティコアの顔面を目掛けて飛翔する。
いい威力! だが、これじゃあ倒せない。
利用させてもらう!
マンティコアは水魔術に注意を向けている。
というより、巨大な水の球は俺を綺麗さっぱり包み隠しているのだ。
ここしかない……!
俺はその水の球を、一刀両断する。
水を突き破ると、その中から一気にマンティコアへ詰め寄る。
「グァ――!?」
突然攻撃魔術の中から現れた俺に、マンティコアは一瞬身体を仰け反らせる。
今ッ!
「はッ!!」
俺は上段から垂直に、ただ愚直にマンティコアへ向けて刀を振り下ろす。
マンティコアはそれを――――体勢を崩しながらもギリギリのところで避けてみせた。
さすがはマンティコア。
そうでなくちゃ。
ここからが、俺の奥義――!
俺はその高速で振り下ろした刀を地面スレスレで強引に切り返す。
手首に掛かる重圧を押しのけ、振り下ろした時よりもはやい速度で、そのまま上に振り抜く。
「――――霞流剣術"朧三日月"」
俺の刀は、マンティコアの顔面を顎下から脳天まで一気に駆け抜け、パックリと真っ二つに引き裂く。
意識外からの攻撃。不意の一撃。
霞んだ薄い三日月の様な軌跡を描く、不可視の剣撃。
今まで俺の刀を塞いできた爪や牙、皮膚による防御は間に合わない。
その威力は、通常の攻撃の比ではない。
マンティコアは断末魔の叫びを上げる間も無く絶命し、ドシンと音を立てて地面に平伏す。
土煙がまい、さっきまで騒がしかった森に静寂が訪れる。
「――ふぅ」
カチン。
俺は刀を鞘へとしまう。
「ホロウ……!」
驚いた様子でセシリアが駆け寄ってくる。
「すごい剣術だったわ……文句ない勝利よ!」
「はは、ありがと。サポート助かったよ」
「いや、私なんてあんまり活躍できなかった、悔しいけれど」
セシリアは唇を尖らせる。
「いやいや、そんなことないよ。戦闘中俺が攻撃にだけ専念していられたのはセシリアのサポートがあったからだよ。ありがとな」
するとセシリアは少し顔を赤くし、恥ずかしそうにプイッとそっぽを向く。
「べ、別に褒めても何もないわよ。――とにかく、やったわね」
「うん。いろいろあったけど……これで試験達成だ!」
――冒険者試験、二次試験。マンティコア討伐完了。
セシリアの魔術の反応を読み取って、前衛の俺はそれを織り込み済みで攻撃を組み立てる。
「すごい……戦いやすい……!」
セシリアは感動しながら俺と息を合わせる。
突貫的なパーティだが、俺の特性がパーティ戦闘の連携を可能にしていた。
しかし、魔術を使えない俺にとって軽々と距離を取るマンティコアの機動力は厄介で、最後の決め手に欠けていた。セシリアの魔術も、お世辞にもマンティコアに致命傷を与えられるような代物じゃない。
だが一方で、マンティコアの攻撃も俺には効かない。
魔術ではない攻撃だが、俺の動体視力ならマンティコアの攻撃など避け、刀で受け止めるのはたやすい。幻影の剣豪たちの剣に比べれば簡単なものだ。
爪と刀、牙と刀。
その二つが激しく何度もぶつかり合い、火花が散る。
「ふッ……!!」
「ガァぁぁぁ!!」
マンティコアの咆哮に負けじと、俺も力を入れる。
とはいえ……間違いなく、今まで戦った中で最強の相手……!
思わず顔がにやける。身体が震えるのを感じる。
いつかカスミが言っていた、武者震いって奴だろう。
生と死の狭間。一つ間違えばあの鋭い爪が俺の肉体を抉り取る。
その局面に置かれ、俺の中の何かが目覚めようとしていた。
『はは、剣豪らしくなってきた……! やろう、ホロウ!』
カスミの嬉しそうな声に、俺は頷く。
目覚める俺の中の血。相手が魔物だということが俺の中の血を目覚めさせる。
1秒でも長く、俺はこの戦いを続けたい。
その思いが、俺にとどめでは無く様々な攻撃を繰り出させ、有意義な実践訓練となっていた。
「まだまだあ!!」
俺はあえて刀を馬鹿正直に脳天へ振り下ろす。
しかし、さすがに慣れてきたマンティコアはそれを器用に躱す。
「さすがに……!」
『でもいけるわよ、ホロウ。そろそろ一気に畳み掛けましょ』
「あぁ!」
あの技で決める。
初の大物、マンティコア。いい訓練になったよ。
後方でセシリアの魔術が発動する反応を感じ取る。
いいタイミングだ。これに合わせる……!
「いくぞ!」
「グウオオアアアアア!」
マンティコアも俺の剣の威力に危機感を感じ取ったか、攻勢に出る。
マンティコアは一気に跳躍し、瞬く間に俺との距離を縮める。
あんぐりと広げた口で、俺に襲い掛かる。
――が、一瞬。
後方より現れた高速の水の砲撃。
セシリアの放った水属性魔術が、マンティコアの顔面を目掛けて飛翔する。
いい威力! だが、これじゃあ倒せない。
利用させてもらう!
マンティコアは水魔術に注意を向けている。
というより、巨大な水の球は俺を綺麗さっぱり包み隠しているのだ。
ここしかない……!
俺はその水の球を、一刀両断する。
水を突き破ると、その中から一気にマンティコアへ詰め寄る。
「グァ――!?」
突然攻撃魔術の中から現れた俺に、マンティコアは一瞬身体を仰け反らせる。
今ッ!
「はッ!!」
俺は上段から垂直に、ただ愚直にマンティコアへ向けて刀を振り下ろす。
マンティコアはそれを――――体勢を崩しながらもギリギリのところで避けてみせた。
さすがはマンティコア。
そうでなくちゃ。
ここからが、俺の奥義――!
俺はその高速で振り下ろした刀を地面スレスレで強引に切り返す。
手首に掛かる重圧を押しのけ、振り下ろした時よりもはやい速度で、そのまま上に振り抜く。
「――――霞流剣術"朧三日月"」
俺の刀は、マンティコアの顔面を顎下から脳天まで一気に駆け抜け、パックリと真っ二つに引き裂く。
意識外からの攻撃。不意の一撃。
霞んだ薄い三日月の様な軌跡を描く、不可視の剣撃。
今まで俺の刀を塞いできた爪や牙、皮膚による防御は間に合わない。
その威力は、通常の攻撃の比ではない。
マンティコアは断末魔の叫びを上げる間も無く絶命し、ドシンと音を立てて地面に平伏す。
土煙がまい、さっきまで騒がしかった森に静寂が訪れる。
「――ふぅ」
カチン。
俺は刀を鞘へとしまう。
「ホロウ……!」
驚いた様子でセシリアが駆け寄ってくる。
「すごい剣術だったわ……文句ない勝利よ!」
「はは、ありがと。サポート助かったよ」
「いや、私なんてあんまり活躍できなかった、悔しいけれど」
セシリアは唇を尖らせる。
「いやいや、そんなことないよ。戦闘中俺が攻撃にだけ専念していられたのはセシリアのサポートがあったからだよ。ありがとな」
するとセシリアは少し顔を赤くし、恥ずかしそうにプイッとそっぽを向く。
「べ、別に褒めても何もないわよ。――とにかく、やったわね」
「うん。いろいろあったけど……これで試験達成だ!」
――冒険者試験、二次試験。マンティコア討伐完了。