震える身体に、そう言い聞かせた。

「まさか、用意した花嫁衣裳が、こんな時に使われるなんて。」

お父さんは、涙を堪えながら、私を抱きしめた。


「お父さん。私が水神様に嫁いでも、たまには遊びに来てね。」

「ああ。必ず会いに来るよ。」


私は一向に背中を向けた。

涙が溢れる。

怖い。

私は今から池に入って、死の世界に向かわないといけないのだ。

身体が震える。

そして神主様のお祈りが終わった。


「では、つき殿。行ってらっしゃいませ。」

「行ってらっしゃいませ。」

私は、池の中に足を踏み入れた。

一歩前に進む度に、足が冷たくなっていく。


ああ、これで私の人生、終わりなんだ。