でも手足が短くて、踊っていると言うより、駄々をこねているように見える。

「どうだ?奥方、楽しくなってきたか?」

「まあまあ。ありがとうね、鯛さん。」

私がお礼を言うと、元々桃色だった鯛さんが、もっと桃色になった。


「礼を言われるほどでもないよ。」

鯛さんが頭を、弾むように動かす。

「ところで鯛さんって、どうして湖を泳げるんですか?」

「ああ、るか様のおかげだね。私は元々、村人が持ってきた捧げものだった。でも湖に入れられて、苦しんでいるところを、るか様が苦しまないように術をかけてくれたのだ。」

「それで、その恰好……」

鯛の頭に、小さな子供みたいな身体を持っているのね。

「では、奥方が元気になったところで、私は退散する。」

「えっ?」

「それっ!」

そしてまた、湖の中に入り、スイスイと泳いで行った。


「一体、何だったのかしら。」

私が不思議がっていると、後ろでほのさんが笑いを堪えていた。

「きっとあの鯛、つき様の事が、好きなんですよ。」

「えっ……」

「ふふふ。つき様をわざわざ楽しませる為に、やってくるなんて。いいですね、つき様。」