「誰?」

戸を開くと、そこには泣きながら、息を切らしているときがいた。

「お願い!つき!生贄を変わって!」

「とき……」

「まだ死にたくないの!お願い!」

ときは、膝を地面に着いて、私に手を合わせた。

「お願い、つき。お願い!」

ときの身体は、震えていた。


その時だった。

「何だ、どうした?こんな時分に。」

お父さんが、廊下を渡って来た。

「とき。生贄はこの村を救う重要な役割だ。おまえにしかできない事だ。」

「でも、私は嫌です!お願いです!助けて下さい!」

「ならぬ!」

「どうして私なのですか!?他にもたくさん、村に娘はいるでしょう!」

ときの顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「嫁に出せる娘は、ときしかいないんだ。水神様の嫁だ。」


水神様の嫁?

その時私の頭の中に、やけに髪の長い男の人が現れた。

これは誰?