「そなた、生娘だったのか。」

ぼーっとしている私に向かって、るか様は尋ねた。

「男と交わらずに、人間としての人生を終わるとは。悲しい思いをさせた。」

でも、何が何だか分からずに、男女の交わりを知った私は、るか様の言っている意味が、分からなかった。


「つきは、好いた男はいなかったのか?」

「好いた……男……」

その時に浮かんだのは、はやての顔だった。

「いました。でも、私は……」

知らない内に、涙が出ていた。

「村の為に、自分の命を捧げるのが、豪族の家に生まれた者の宿命ですから。」

私は、顔を両手で覆った。


「嫁入りは、本心ではなかったのか。」

るか様は起き上がると、側にあったお酒をまた飲み始めた。

「今夜はもう寝ろ。」

その声は、恐ろしいくらいに、低いモノだった。