「私も、生贄の1人なのよ。」

驚いて声も出なかった。

「生贄になった者の中には、るか様に気に入られて、この屋敷に招き入れられた人達もいるの。私達みたいにね。」

胸が締め付けられる。

「あの人……水神様は、私を妻にすると言ったけれど、他にも奥方達はいらっしゃるの?」

「いいえ。昔はいたと言うけれど、私が来てからは、奥方はいなかった。だから、久しぶりの結婚だと思うわよ。」

私は女の人に手伝ってもらって、嫁入り衣装に着替えた。

「どうして、私と結婚をしようと思ったのかしら。」

「相当、つきさんの事を気に入ったのでは?はい。お終い。」

そして女の人は、鏡を見せてくれた。

「嫌ね。今から嫁入りする者が、そんな暗い顔するなんて。」

「だって、私あの人の事、知らないもの。」

すると女の人は、ニコッと笑ってくれた。

「大丈夫よ。悪い人ではないわ。」

すると、部屋の襖を誰かが開けた。


「さあ、迎えが来たわ。行きましょう。」

女の人が私の手を取る。

立ち上がった私は、女の人に付き添われ、部屋を出て、廊下を歩いた。

廊下の壁には、湖の中が透けて見えて、綺麗な水面も見えた。