「こんばんは、お隣に越してきました、剛田です。かわいいお嬢さんね。」
「小鳥遊カノンです。わざわざご丁寧に、ありがとうございます。」
剛田さんはカノンのお母さんと同じくらいの品のいい奥さまという感じ。カノンが受け取ったデパートの紙袋には、缶に入ったクッキーが入っている。
「うちにもカノンさんと同じくらいの息子がいるんだけど、ご迷惑をおかけしたらごめんなさいね。」
「そうなんですか? ご近所さんあんまり居なくて、嬉しいです。ご迷惑だなんて、そんなぁ。」
「いえ。迷惑になりますの。」
冗談ではなく真顔でそういうものだから、笑って流そうとしたカノンの笑い声が行き場を失って不自然な咳として排出される。
「あら、寒かったかしら? では失礼しますね。」
*
翌日。いつものように家を出て、いつものようにバスで「カノンちゃんだ!」とささやかれ、いつものように校門から「カノンちゃんだ!」の歓声を浴びる。ミス米町に選ばれてから変わらない、いつもの光景が広がる。教室に机が1つ増えている以外、至っていつもの光景。
「カノン、やばいよ。」
教室の後ろのほうでだべっていたリカコがカノンにすり寄ってくる。
「やばいのが転校してくるんだって。」
「へぇ?」
美人の顔してふぬけた返事をカノンは返している。
リカコによると、転校生は隣町でガキ大将と恐れられているらしい。ツーブロックにパーマをかけて、サングラス。小さな子は避けて通るようなワルらしい。しかも転校の理由というのがケンカらしく、女の子にケガをさせて居られなくなったとか。
「なにうちらの高校生活乱してくれてんの。」
「でしょ? もー、サイアク!」
カノンが斬り、リカコが嘆いたところで担任の先生が転校生を連れて入ってきた。
「昨日引っ越してきた。剛田アギト。」
「えええ!!!」
カノンの悲鳴に教室中の視線が注がれた。
*
剛田アギトはウワサ通りの悪感を放っていた。先生に何度注意されても髪型はイカついままだし、制服にはジャラジャラ鎖をつけている。気になって見てしまえば、
「あーん?」
と、ガンを飛ばされる。
しかもカノンと家が隣だから、登下校の時に後ろを歩かれるのがなんとも嫌らしい。
「あーん?」
視線を感じて後ろを振り向くとこれだ。カノンの高校生活はアギトの登場で完全に別のものとなってしまった。
「小鳥遊カノンです。わざわざご丁寧に、ありがとうございます。」
剛田さんはカノンのお母さんと同じくらいの品のいい奥さまという感じ。カノンが受け取ったデパートの紙袋には、缶に入ったクッキーが入っている。
「うちにもカノンさんと同じくらいの息子がいるんだけど、ご迷惑をおかけしたらごめんなさいね。」
「そうなんですか? ご近所さんあんまり居なくて、嬉しいです。ご迷惑だなんて、そんなぁ。」
「いえ。迷惑になりますの。」
冗談ではなく真顔でそういうものだから、笑って流そうとしたカノンの笑い声が行き場を失って不自然な咳として排出される。
「あら、寒かったかしら? では失礼しますね。」
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翌日。いつものように家を出て、いつものようにバスで「カノンちゃんだ!」とささやかれ、いつものように校門から「カノンちゃんだ!」の歓声を浴びる。ミス米町に選ばれてから変わらない、いつもの光景が広がる。教室に机が1つ増えている以外、至っていつもの光景。
「カノン、やばいよ。」
教室の後ろのほうでだべっていたリカコがカノンにすり寄ってくる。
「やばいのが転校してくるんだって。」
「へぇ?」
美人の顔してふぬけた返事をカノンは返している。
リカコによると、転校生は隣町でガキ大将と恐れられているらしい。ツーブロックにパーマをかけて、サングラス。小さな子は避けて通るようなワルらしい。しかも転校の理由というのがケンカらしく、女の子にケガをさせて居られなくなったとか。
「なにうちらの高校生活乱してくれてんの。」
「でしょ? もー、サイアク!」
カノンが斬り、リカコが嘆いたところで担任の先生が転校生を連れて入ってきた。
「昨日引っ越してきた。剛田アギト。」
「えええ!!!」
カノンの悲鳴に教室中の視線が注がれた。
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剛田アギトはウワサ通りの悪感を放っていた。先生に何度注意されても髪型はイカついままだし、制服にはジャラジャラ鎖をつけている。気になって見てしまえば、
「あーん?」
と、ガンを飛ばされる。
しかもカノンと家が隣だから、登下校の時に後ろを歩かれるのがなんとも嫌らしい。
「あーん?」
視線を感じて後ろを振り向くとこれだ。カノンの高校生活はアギトの登場で完全に別のものとなってしまった。



