「フヨさん…っ!」

私の言葉を聞いた瞬間、九郎の顔がパァッと光り輝いた。私の両手を自身の大きな手の平でもって大事そうに握り、何度も何度も首を縦に振る。

「うんうん、約束します!しますとも!
良いことしかしませんよ僕は!」

「そ、それが怪しさ満点なんだけど…。
まあいいや…。」

自分より体も大きくて年上な男の人に懐かれるのは、何とも変な感じがする。
でも握られた手からは、九郎の手の平の温もりが直に伝わってきて、その慣れない感覚に浸っていると、だんだんくすぐったい気持ちが芽生えてくる。

思えば、誰かに「好き」と伝えられるのも、肌に触れられるのも、遠い昔に両親とともに消え去った思い出だ。
長らく抱えていた孤独がこんなに簡単にほぐされるものなのかと、私は一人驚く。
昨日は戸惑い不快に感じていたこの温もりに、今は懐かしさすら覚えてる。

こんなこと絶対口にはしないけど、九郎が執拗に構ってくれることで、私は密かに安心を貰ってるようだった。


「フヨさん、もしかして今嬉しいと思ってます?」

「…っ!!
全然!む、むしろ困ってる!!」