あの日、緋色の目で京を見たときあまりにも衝撃的な映像が浮かんできたためすぐに目を逸らしてしまった。
だから、何故彼が血まみれだったのか、誰かが関与していたのか…わからないのだ。
ただ、一つ言えるのは京が自ら命を落とすようなことはしないということだ。
だから自害ではない。自ら身を投げようとしたつばきを助けた男だ、そんなことはしないだろう。とすれば、事故か事件か…。
もう一度緋色の瞳で京を見ようとしたが見ることが出来なかった。
何も脳内に入ってこないのだ。これには理由があった。同じ人物を緋色の瞳でもう一度見るのには”時間”を空けなければならない。
私は二度、同じ人を緋色の目で見たことがある。それは自分の母親だった。一度緋色の目で母親を見た数か月後にもう一度緋色の瞳で母親を見た。
私の緋色の瞳にはルールがあるようだ。
緋色の目で二回以上同じ人物を見ることは可能だが、それにはある程度の期間が必要なのだろう。具体的にどれくらい間隔をあければいいのか試したことのなかったつばきは悩んでいた。ただあの時みた京の髪が今よりも少しだけ伸びていたような気がしたから未来はまだ先なのではないかと思った。
ちょうどタイミングよく今日は翔が遊びに来ていた。京が応接間に来る前につばきは翔に耳打ちした。
「つばきちゃん?」
「あの…お願いがありまして…」
「何?お願いって」
「今度お時間いただけないでしょうか。京様には内緒で。お聞きしたいことがあります」
「内緒?いいけど…京君に内緒って可能?」
「大丈夫だと思います。来週翔様のお休みの日があれば…」
「じゃあ来週の水曜日はどう?多分京君は仕事だろうから」
「それでは日本橋で待ち合わせをしましょう」
翔は不審がることもなく、すんなりとつばきの要望を受け入れた。
京には知られることなく京と関わる人について知りたかった。みこは勘がいい。
話しの流れで聞ける情報もあるとは思うが深く訊くと疑われるだろう。
そしてみこに自分の行動を知られると絶対にそれは京の耳へ届くだろう。
だったら翔の方が仲はいいとはいえ頻繁に会う関係ではないだろうし色々と訊けると思ったのだ。
「なんだかつばきちゃん、変わったよね」
「そうですか」
「変わったのは京君も、だろうけど」
曖昧に頷くが京もつばきもどこが変わったのか分からなかった。