「そうだな。いや…つばきは元々強い女性だと思っていた。初めて会った時から…」
遠くを見つめ、少し前を思い出す京の顔を見て翔が目を細めた。
「変わったのは京君もじゃないかな。随分優しくなったね」
「そうか」
「そうだよ。さて、俺はつばきちゃんに会えたし帰ろうかな」
「翔、お前はつばきを好いているのか」
再度同じ質問をぶつけた。曖昧に返事をされては京も困るのだ。
所謂、翔は幼馴染でもあり親友でもある。もしも翔がつばきに好意があったら…―。
あまり考えたくはないが翔が誤魔化した理由がそれ以外見当たらないのだ。
「んー、そうだね。気になってはいたんだよ」
「…そうか」
「随分かわいい子がいるなぁって。それにあの子不思議な雰囲気を持ってるでしょ。呪われた瞳っていうのも気になるし。とにかく興味があるんだよ。でも安心して、別にどうこうしようとは思ってないから。それにつばきちゃんは京君のこと好きだと思うし」
翔が立ち上がる。
何も言わなかった。興味がある、気になる、それがどういう意味で向けている感情なのか深く訊くわけにもいかない。玄関先まで翔を見送る。